タイのオタク向けコンセプトカフェ「まんがにあ」仕掛け人が語る、タイのオタク市場のこれから

「まんがにあ」の現在の客層はすべてタイ人オタクというわけではなく、一般的なタイ人も多く入っていた

 7月3日、タイの商業施設「ゲートウェイ・エカマイ」に、日本の雪をコンセプトにした「スノータウン」がオープンした。場内に人工雪を降らせ、ソリ遊びやちょっとしたスキーができるようになっている。施設内外には日本の飲食店などもオープンし、最初の土日は入場制限がされるほどの大盛況となっていた。  この「ゲートウェイ」自体は以前から日系レストランなどを多く揃え、日本押しの施設だったが、人気はイマイチだった。人が少ないせいで、それを逆手に取ったかのように日本のアニメなどに傾倒したタイ人の若者たちがコスプレをして集まり撮影などをするスポットになっていた。

需要はあれど供給不足なタイのオタク市場

 そんなゲートウェイにオープンした「スノータウン」は、そうしたコスプレイヤーなどのいわゆるオタクを取り込もうという試みをしている。その先頭に立っているのが、場内にカフェを構えている「まんがにあ」だ。オープンから来年の6月末までの1年間は特別イベントとして、クリプトン・フューチャー・メディア社の音声合成用ボーカル音源のキャラクターである初音ミクから派生した雪ミクとコラボした“雪ミクカフェ”を開催している。  タイではこういったオタク向けの市場はどのような状況にあるのか。「まんがにあ」を運営するLINK(THAILAND)社の代表取締役大場敬幸氏にお話を伺った。 「市場はまだまだこれからだと思います。需要は高いと思いますが、それに対する供給が足りていない状態です」  そのため、タイのオタクは日本に多い「マニア」というよりも、その手前の「ファン」が多い印象だと大場氏は続けた。ご存知のようにアニメのキャラクターなどは許諾関係が日本国内での商用でさえ厄介なものだが、国外はさらに難しくなる。しかも、タイの場合は外資規制が厳しく、法人設立の際に株式保有率はタイ人に半数以上としなければならない。個人もしくは中小企業レベルの日本人がタイで会社を立ち上げても、実際にはタイ人パートナーのものになってしまい、日本国内にいる権利保有者は許諾に慎重にならざるを得ない。よって、タイのオタク市場にグッズなどを正規販売するのがより困難になり、並行輸入や個人輸入に頼らざるを得なくなる。そんな現状なので、正規品の供給が非常に少なくなるというわけだ。 「市場が成熟していないこともあって、タイではオタク向けのポータルサイトもまだないような状態です。ですので、まずはこの店からという意図もあります」

漫画を産業にすることで海賊版をなくす

日本の漫画専門学校で学んだこともあるマネージャーのパチャラさん(31歳)私の年齢で漫画が好きだというのはタイでは少ないです」

 大場氏の日本での本業は漫画制作やその権利関係の管理である。そのため、元々はタイ人漫画家を育てたいという思いがあった。先ほども書いたように、タイにはマニア層が薄く、自分でクリエイトしたいという人がまだ少ない。  さらに、「まんがにあ」の従業員であり、かつては3年半ほど日本に留学し、漫画の専門学校で学んでいたというパチャラさん(31歳)はこう語る。「タイ人は大人になると漫画を読みません。30代で漫画を読む人というのはほとんどいないですよ」  そう、タイでは漫画は子どもが読むものでしかなく、漫画業界自体が大きな産業にはなっていないのだ。 「中国の職業訓練校で漫画学科の立ち上げを行ったときに感じたのですが、自国の産業にならないと海賊版はなくならないのかなと……」  大場氏によると、韓国での漫画市場について言えば1990年代頃から海賊版は減少しているという。特に近年、スマートフォンの普及に伴いWebtoonという韓国独自の漫画スタイルが確立され、電子書籍の市場規模は漫画以外も含まれるが、日本円にして1000億円を超えている。そのため、海賊版が出回らないような法整備も進んでいるのだ。 「タイのオタクやコスプレイヤーも初音ミクはよく知っています。『スノータウン』に入るためには入場料が必要なので、飲食料は学生でも気軽に来られるように低く設定しました。今後は漫画講座や声優、アニソン歌手を連れてくるなどしながら、当店を日本とタイのホットラインとして両国のオタクや関係者に活用していただきたいですね」  大場氏がタイのオタク市場のキーマンになるのか。その活躍は今始まったばかりだ。 ⇒【写真】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=51730 <取材・文・撮影/高田胤臣 Twitter ID: @NatureNENAM
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など