自転車の取り締りにも「青キップ制度」が必要なの?

自転車 自転車の交通違反に対する取り締まりが今年6月から強化された。路上で警察官が取締りに当たる様子がメディアでさかんに報じられている。しかし自転車の場合、検挙されればいきなり「赤キップ」が切られて、刑事処分の対象となってしまう。  しかも自転車の検挙数が膨大になれば、警察や裁判所の処理能力がパンクする可能性もゼロではない。自転車にも、自動車運転者を対象に軽微な違反に対して導入されている「青キップ」のような制度を取り入れることは可能なのだろうか。

欧米ではすでに「青キップ」導入が進む

 自動車運転者の場合、一時停止違反や駐車違反といった比較的軽い交通違反で検挙されると、「交通反則通告制度」にもとづき警察官から「青キップ」が交付される。この時、反則金を納めれば処理が完結。刑事処分の対象とはならない。モータリゼーションの浸透を背景に、交通違反処理を効率的に行う制度として導入され、今日に至っている。  同様の制度は欧米ではすでに導入されているという。今国会での成立をめざす「自転車活用推進法案」についてのシンポジウム(第二東京弁護士会主催)が6月下旬、都内で行われたが、パネラーの一人でNPO自転車活用推進研究会の小林成基理事長はこう話した。 「ベルリンでは、市の委託を受けた職員が取り締まっています。例えば無灯火で自転車が走っていたとすると、職員が呼び止めて『君、ダメだよ。10ユーロ』と請求します。ニューヨークでは10ドルだったでしょうか。ともかく違反した人はその場で支払い、領収書をもらって終わりです」  制度はどのような仕組みで成り立っているのか。小林さんによれば、「道路交通法で自転車への罰則を定めているのは日本くらいのもの。欧米ではロンドン市警、ニューヨーク市警というように、自治体警察が条例に基づき取り締まっている」のだそうだ。

取り締まりの権限を警察から自治体へ

「例えば、10年くらい前に東京・千代田区が歩きたばこを規制する条例を設けましたが、これは上位法がないからできたこと。道交法で自転車への罰則が定められている現状では、自治体が条例を決め、独自に取り締まることができないのです」(小林さん)  つまり道交法に自転車の罰則についての規定がある限り、日本で自転車への「青キップ」導入は困難、という見立てだ。そこで小林さんは次のように道交法を改正するよう提案する。 「自転車への罰則に関する項目を削除して、『自転車への罰則は自治体で定める』と1行書き加える。そして全国の自治体で自転車の罰則を定める条例を一斉に施行するのです。それくらいの大改革をやらないと、自転車への取り締まりは変わらないのではないでしょうか」  少々荒技のようにも聞こえるが、日本での「前例」はあるという。「放置自転車の取り締まりは、かつては警察でなければできませんでしたが、いわゆる『自転車法』を施行して権限を自治体に落とした。そうすることで放置自転車が劇的に減りました」と小林さんは話す。  自転車通行空間を整備し、しかも学校で交通安全教育をしっかり行うことで、自転車の交通違反を減らしていくのが一番いいのはもちろんだ。しかしいずれも長期的な取り組みだ。また、「自転車免許」は制度設計が極めて難しく、導入事例もない。「青キップ制度」について考える時が来たのかも知れない。 <取材・文/斉藤円華>