北九州地盤の老舗百貨店、井筒屋。業績は最悪期を脱した
5月に日経平均が2万円回復を果たした最大の原動力は円安だった。今後も株価が上がるかは円安が進むかどうかがポイントとなるわけだが、株式ジャーナリストの大神田貴文氏は次のように話す。
「大雑把に見て、’13年から年20円ずつ円安になってきました。さらなる大幅な円安は期待しづらいですから、相場全体の上昇幅は限られるでしょう」
そこで、個別銘柄の選別が重要になる。といっても難しい話ではなく、成長していく企業を投資先にすればいいだけだ。
「少子高齢化の進む日本で、最大の成長産業は医療や高齢者向けサービス。1948年前後に生まれた団塊の世代が70歳近くになりました。リタイヤ世代向けビジネスの中核は資産運用や旅行から、生活支援や介護に交代しようとしています。また、訪日外国人相手のビジネスも業績成長が期待できます。政府はビザ発給要件を段階的に緩和しており、今後は訪日客マネーを取り込めるかどうかで、小売業の二極化が加速していくでしょう」
大神田貴文氏
「高齢化」も「訪日外国人」も、関連する銘柄は数多いが、今回紹介している5銘柄は、思惑先行による株価急騰が期待できるハイリスク系のものを取り上げた。
「このところ人気が離散していた銘柄だけに、上値を圧迫する利益確定売りは少なく、一度人気に火がつくと株価は軽やかに上昇するのではないでしょうか。株価上昇に遭遇したら、長期投資にこだわらず、さっさと売ってしまうのが吉です」
◆アスモ(東2・2654)81円/100株
【最低購入金額】8100円
【目標値】140円
【買い時額】75円
【損切り】60円
【PER】16.88倍
【PBR】3.16倍
【配当利回り】1.23%
食肉問屋と居酒屋チェーンの異業種統合で発足。「業態転換を急いでおり、今では給食サービスが事業の柱として育っています。介護関連事業の強化にも本腰を入れている。今はひたすら規模を拡大する時期にあり、売上高では食肉や居酒屋を上回る。遠からず介護事業もグループ利益にも貢献してくるでしょう。介護と給食の両事業の相乗効果にも期待できそうです」
◆ライドオン・エクスプレス(マザーズ・6082)1600円/100株
【最低購入金額】16万円
【目標値】2200円
【買い時額】1400円
【損切り】1000円
【PER】22.79倍
【PBR】5.03倍
【配当利回り】0.63%
’13年末に上場したが、創業14年目で安定感が増してきた。「食材の宅配サービス『銀のさら』の拡大が続いています。財務的にも安定しており、’15年3月期に初の配当を実施しました。経済的に余裕のある共働きの中高年層を中心に固定客をがっちり摑んでいるのが強みです。顧客の高齢化を受けて、飲み込みやすく栄養バランスにも配慮した介護食の宅配サービスにも進出するとみられます」
◆ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(マザーズ・6090)1114円/100株
【最低購入金額】11万1400円
【目標値】2500円
【買い時額】1000円
【損切り】900円
【PER】586.32倍
【PBR】3.74倍
【配当利回り】―
創薬支援を展開。「うつ病性障害の血液マーカー検査の受託が社業の安定に寄与。抗がん剤の効果を調べる投薬前診断薬も開発中で、成功なら株価急騰の可能性があります。連続赤字のバイオ企業が上場維持するなか、同社は売上高が右肩上がりで推移し、経常損益の黒字化も達成しました。初配当はまだ先だからこそ、株価の上昇余地が大きいといえそうです」
◆井筒屋(東1・8260)64円/100株
【最低購入金額】6400円
【目標値】90円
【買い時額】65円
【損切り】50円
【PER】12.31倍
【PBR】1倍
【配当利回り】―
北九州地盤の老舗百貨店。地理的に東南アジアの窓口にあたるため、中国や台湾、韓国からの観光客の来店が増えている。「業績不振が長く、一時は信用不安説も流れましたが、リストラを断行したところに外国人の大量訪日が重なり、またとない追い風に。業績は最悪期を脱したと思われますが、株価は今後の業績改善の可能性をほとんど織り込んでいないほどの低水準で放置されています」
◆ヤマノHD(JQ・7571)87円/100株
【最低購入金額】8700円
【目標値】160円
【買い時額】80円
【損切り】70円
【PER】12.99倍
【PBR】2.42倍
【配当利回り】2.3%
美容室や着物店、スポーツ用品店などを多面展開する。山野愛子美容室を母体とし、着物などの和装品問屋で東証2部上場「堀田丸正」もこの会社の傘下。「宝飾品販売も手掛けており、アジアからの訪日客の獲得に好適な業態です。美容室事業の拡大など、各方面で経営改革を急いでいます。株価は低水準ですが、突然急騰する習性があり、超短期売買投資家がしばしば株価を大きく動かします」
【大神田貴文氏】
株式ジャーナリスト。国内大手証券、外資系証券などを経て現職。マーケット情報に精通しているだけでなく、個別企業の裏情報やファンド筋情報も知る事情通。また、金融や経済政策にも強い
※株価などのデータは5月29日終値
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