大連の地下鉄開業で大連っ子の生活はどう変わる?

座席はプラスチック製。人数分に分かれている

 交通状況が年々悪化する中国大連で待望の地下鉄が5月22日から試営業を開始してから1か月が経過した。  明るくきれいな設備なのだが、自国技術や地盤への不信感からか「怖い」と敬遠する人もいて利用客はさほど多くないという(前記事参照)。  いまのところそんな状況だが、大連に地下鉄が普及していくことで、大連っ子の生活も大きく変わってくるだろうと予想される。  どんな変化が起きてくるか。まず、挙げられるのは、交通渋滞の緩和効果だ。特に大連は、タクシーがつかまらない都市という不名誉な悪評があるので、状況緩和に一役買ってくれそうだ。さらに、現在のタクシー売り手市場が少しでも解消されれば、タクシーのレベルも向上するだろう。

硬貨嫌いの大連っ子に硬貨が普及する!?

 影響としてもう1つ考えられるのが、硬貨の浸透である。これには疑問符が浮かぶ人が多いと思うが、中国の1元には、硬貨と紙幣がある。大連では、同じ1元でも紙幣を好み、お釣りで硬貨をもらうと紙幣と交換する人が多い。実際に、先に導入された北京でも「私が小さい時には紙幣のほうが一般的だったと記憶しています。北京の人がコインを好むようになったのは、地下鉄の拡張が盛んになった2000年以降だと思われます」(北京出身で大連在住の40歳男性)というように、同様の現象が起きているのだ。  なぜ紙幣を好むのかは不明だが、硬貨が普及してくるであろう理由はこうだ。多くの自動券売機は、1元札には対応しておらず、1元硬貨か5元、10元の少額紙幣になっているためSuicaのようなICカードを持っていない人には1元は、紙幣よりも硬貨のほうが使い勝手がよく好むようになるのだ。  ちなみに、開業までのプロセスも日本と異なり面白い。工事終了から、「試乗期間」⇒「試営業」を経て、いよいよ「本営業」となるのである。現在は、日本では馴染みのない「試営業」の段階となる。  4月30日から5月17日に試乗期間として事前予約があれば無料で乗り放題。この間に試乗した人は34万人だった。そして、5月22日から試営業を開始。本営業と試営業の違いは明確ではないが、トラブルがあるかもしれないよという位置づけのようだ。すなわち、日本は開通時から完璧な運用、オペレーションを行って当然とされるが、中国では、最初から完璧を目指していないのだ。それが、この3つの過程に表れていると言える。果たして、いつ本営業へ移行するのかは発表されておらず、瀋陽の例からするとなし崩し的に本営業へ移行すると思われる。  現在、大連地下鉄で運行されているのは、24.5km、17駅を約47分、表定速度は30.7kmと遅いなと感じるが、ほぼ同規模の東京メトロ丸ノ内線(24.5km、25駅で表定速度29.2km)と比較すると特に遅いというわけはなさそうだ。路線幅も丸ノ内線と同じ標準軌を採用している。  すでに地下鉄が開通している中国大陸の都市は、北京、天津、上海、広州、深圳、南京、成都、瀋陽、仏山、重慶、西安、蘇州、昆明、杭州、武漢、ハルビン、鄭州(開通順不同)。2017年までにさらに10都市での開通が予定されている。  大連地下鉄は、今の状態を1、2年維持し、無事故で計画通りに延長していければ、大連市民の”怖い”が払拭されて真の意味で市民の足として活躍する日もそう遠くない未来に訪れるかもしれない。 <取材・文/我妻伊都(Twitter ID:ito_wagatsuma