不正会計に揺れる東芝。その決着のシナリオを読む

日経平均の12連騰から「バブル」も意識され出した日本経済。確かに株式市場は好調だが、実は先行き不安を駆りたてる悪材料もある。マーケットの裏の裏まで知り尽くした闇株新聞が注目ニュースを総ざらい!

一時は上場廃止の危惧すらあった

東芝の田中久雄社長

不正会計発覚後の会見で謝罪した東芝の田中久雄社長。6月の定時株主総会での決算報告は見送り、第三者委員会の調査を待って7月に臨時総会を開催予定

 東芝は5月8日に、インフラ関連の工事原価が過小に見積もられる“不適切”な処理が判明したため、第三者委員会を設置すると発表しました。同時に、’15年3月期の決算短信は期限の5月15日までには提出できず「6月以降」まで遅延すると明かし、期末配当を取り消すというリリースも出しました。常識的に考えれば、過年度の有価証券報告書(少なくとも時効になっていない5年分)を6月末までに提出しなければなりませんが、これでは到底不可能。監理ポスト入り、ないしは上場廃止のリスクさえあると危惧していたのですが、5月29日には信じがたいIRが立て続けに出ました。16時50分に有報の提出期限を8月31日に延長してもらえるよう申請したと発表したのですが、その1時間20分後には「提出期限延長申請に係る承認のお知らせ」なるIRを出したのです。2か月の延長もさることながら、たった1時間20分でその承認が下りるなど前代未聞。承認したのは金融庁(関東財務局)と東証ですが、超過保護的措置と言わざるをえません。  不思議なことに、どこからともなく過去の業績(利益)修正額は最大500億円と、屋台骨が揺らぐほどのものでないことも伝わってきています。一方で、第三者委員会の調査対象は映像、半導体、パソコン事業などにも広がりました。これらを総合すると、不適切会計が社内抗争の材料にされていると推測できます。4月3日には室町正志会長を委員長に据えた特別調査委員会を設置されていますが、この時点ですでに状況は解明されたのでしょう。第三者委員会を設置したのは、事件性のない「単純ミス」と結論付けられることが見えたから。そのミスは社内抗争に敗れた陣営側の「過失だった」と報告して、処分・放逐するシナリオです。  東芝は世界有数の原発メーカーであり、’14年12月末時点で長短合わせて1兆9000億円以上の外部負債を抱える大企業です。当然、政府も銀行も「まったく問題がなかった」という結論でないと困るわけです。それだから、超過保護的措置が取られ、責任は社内の不満分子になすりつけられて、事件化もせずに忘れ去られていく……そんな未来が見えるのです。