ロボットタクシーは不可能? 実現を阻む法制度

DeNAが66.6%を出資し、ZMPが33.4%を出資して設立した新会社「ロボットタクシー」。写真左がDeNAの中島宏執行役員、右がZMPの谷垣恒社長

 日本でもいよいよ自動運転の実用化に向けた動きが出てきた。ソーシャルゲーム大手のDeNAはロボットベンチャーのZMPと合弁で「株式会社ロボットタクシー(仮)」を5月29日に設立。自動運転によるタクシー事業を始めることを発表したのだ。2020年の東京オリンピックまでに無人の自動運転タクシー(ロボットタクシー)の実用化を目指す。  ZMPが自動運転の技術開発を行い、DeNAが配車から利用者へのサービス提供など全体のコーディネートを担当。スマホでタクシーを呼び出し、運転手のいない自動運転タクシーで目的地まで向かうロボットタクシーの実現に取り組む。ZMPの谷口恒社長は「高齢者など運転ができない交通弱者に移動の自由を提供するサービス」と位置付け、タクシー不足が深刻化する地方などでの需要を見込んでいる。  すでにZMPは愛知県内の公道で自動運転の実験を始めている。万が一に備えて運転席にドライバーは乗車するが、基本的に運転操作は行わない状態で時速60kmで走行しているという。「技術的には2020年に十分間に合う」とロボットタクシー社長でDeNA執行役員の中島宏氏は自信を見せる。  問題は法律を含めた無人運転に関するルール作りだ。国は自動運転の実現を支援する取り組みを行っているものの、完全無人化運転の実現時期はいまだ未定。無人の自動運転車が事故を起こした場合の責任、保険の対応など解決すべき課題が多いためだ。さらに日本は走行中の車両には運転手がいなければならないと定めたジュネーヴ条約に加盟しているため、国際的なルールづくりを進める必要もある。  とはいえ、自動運転技術を含めた自動車の新しい産業を開拓する国際的な競争がすでに始まっている。米グーグル、中国のアリババなどIT企業がこぞって自動車事業に参入する中、日本も遅れを取ってはいられない。中島氏は「自動車産業は遅れてきたIT革命にさらされている」として、IT企業が活躍できる余地は大きいとアピールした。クルマの未来を切り開く担い手は従来の自動車会社ではない、意外なところから現れるかもしれない。 <取材・文・写真/HBO編集部>