帝王切開天国!? 中国、出産の現実【後編】

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口コミを信じ、縁起を担ぐ国民性も要因

 患者側は、なぜ帝王切開を選ぶのか。中国人は日本人よりも口コミ情報を信じる傾向が強い。特に地方へ行けば行くほどその傾向が強くなる。親戚の医者や大学教授から帝王切開は安全だと聞いたなどの情報を信じている人が多いという。

中国では病院の受付で診察料を先払いするのが一般的

 また、自身も帝王切開での出産経験がある中国人女性医師によると、「中国では、お金をかければかけるほどよい出産ができると信じられています。多くが一人っ子なので両方の両親がお金を出し合い帝王切開での“安全な”出産をと望む人が多いんですよ」  当然のことながら、WHOによると帝王切開のほうが安全という医学的な根拠はないという。  他方、帝王切開は、出産日を調整するためという人も多い。中国では、縁起がいい日や干支にこだわる人も少なくない。たとえば、数字だと8が縁起がいいとされるため、8がつく日に生む出産調整に利用しているのだ。また、今年の干支、未年生まれの子は、短命で幸せになれないと避けられる傾向がある。そのため、旧暦の新年を迎える直前に緊急出産が相次いだそうだ。 「あと俗説ですが、通常の出産を経験するとその後の性生活に悪影響があると信じられており、それで夫婦ともに帝王切開を希望する人が多いと思われます」(同)

利益重視で病院が帝王切開を勧める病院

 病院側の事情を見てみると、まず挙げられるのが利益を上げるためだ。患者に帝王切開を選択してもらえると通常出産の5割増しくらいの出産費用が必要なため病院の利益も増える。さらに、病床の回転率を上げるための手段にも使われていると言われる。中国で出産できるベッド数は慢性的に不足しており、半年以上前から予約しないと空きベッドがない状態という。  ある中国人女性は、留学先の日本で結婚、妊娠し、出産のために予定日の2か月前に帰国したら空きベッドがなく、出産ギリギリで日本へ舞い戻り日本で出産している。

若い世代を中心に自然出産希望者も増えつつある

 しかし、新しい動きも見られるようだ。 「WHOの中国は帝王切開世界一というレポートが中国国内でも報じられて問題視され始めた結果、自然出産推奨へ動き始めており、帝王切開のリスクを正しく理解し始めた若い世代を中心に自然出産を希望する人が増えつつあります。帝王切開を選択するかは、半日、1日ど陣痛が長時間続き出産に支障があったり、母体に危険があると判断される時の選択肢として適切に選んで欲しいです」(前出の女医) <取材・文/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma)>
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