JTのアジア戦略。ウィンストンブランドを強化

 20日、JTは「新グローバルブランド戦略」として「キャビン」、「キャスター」の2ブランドを「ウィンストン」に統合すると発表した。  ウィンストンは99年のアメリカのRJR社買収によってJTが販売しているブランドで、日本での知名度は低いものの、現在111か国以上で販売され、年間販売量は約1300億本にのぼる世界第二位のメガブランド。一方のキャビンは78年、キャスターは82年の発売以来、根強いファンに支持されるJTのオリジナルブランドだ。

記者発表に臨む小泉光臣社長

 あまり世間では意識されないが、いまやJTは収益の約半分を海外で稼ぎ、タバコ市場で世界第3位の売上げを誇るグローバル企業で(専売制の中国を除く)、近年はアジア市場においてプレゼンスをより向上をさせることを課題としていた。  小泉光臣社長は「シガレットは欧米発祥だが、アジアの消費者の嗜好は欧米とは異なると考える。アジアの一国であり嗜好も近しい日本の企業として満足してもらえる商品を提供できるはず」という。  つまり、M&Aによって手にしたウィンストンの“名”を有効活用して、長年日本で愛されてきたキャビンやキャスターの“味”を、アジアを中心とした海外市場に売り出そうという戦略だ。同時にウィンストンを“グローバルNo.1ブランド”へと成長させる戦略の一環でもあるとする。  一方で、国内においてJTはウィンストンのブランディングに苦戦してきた側面もある。その点ではキャビン、キャスターの愛好者を取り込むことでウィンストンブランドの認知度拡大も望める。今回の発表された内容は国内外での相乗効果が狙えるといえるだろう。  JTではメビウス(旧マイルドセブン)をプレミアムブランド、若干価格帯の低い新ウィンストンをサブプレミアムブランドと位置づけていて、現時点でサブプレミアム分野では他社の「ケント」「ラーク」の後塵をはいしているが、小泉社長は「5年をめどにトップシェアを目指し、同時にそれを足掛かりとして海外展開も成功させる」と意気込む。  海外展開に先駆けて、国内において8月上旬からブランド名が、それぞれ「ウィンストン・キャビン」、「ウィンストン・XS・キャスター」に切り替えられ、10月中旬から新パッケージデザインに刷新される予定。  まずは日本市場での「新ウィンストン」のブランディングの成否が、JTの「新グローバル戦略」の試金石となるはずだ。 <取材・文/HBO取材班>