東京五輪・パラリンピック開催に向けて都が「自転車推奨ルート」整備

都が整備を進める「自転車推奨ルート」の7地区

「東京五輪・パラリンピック開催時に、外国からの来訪者を含めて誰もが、大会の雰囲気や観光地のにぎわいを自転車で楽しめるよう取り組みを進める」  東京都は今年4月、東京五輪の競技場、および都心部の観光地の周辺7地区を対象に「自転車推奨ルート」を整備すると発表した。従来は路線単位で整備されてきた「自転車走行空間」を、国道・都道・区市道等の区別なく、幹線道路を中心に一体的かつ網羅的に整備するものだ。有識者は都の施策を「行政の縦割りによる弊害を排した」と評価する。

交差点でも自転車通行空間の整備がスムーズに

 車両である自転車は車道左側を通行するよう、道路交通法で定められている。都は2020年の五輪・パラリンピック開催までに、指定地区内で自転車推奨ルートを約200km整備する方針だ。計画では主に車道左側に自転車レーン(自転車専用通行帯)、および「自転車ナビライン」などの路面表示を設置するが、例えば国道や都道など、管轄が異なる道路が交わる交差点でも都が主導して自転車推奨ルートの整備を行う。 「これまで都は交差点で『思考停止』だったが、今回大きく進歩している」と、NPO自転車活用推進研究会(自活研)事務局長の内海潤さんは話す。 「自転車走行空間を交差点内に設ける場合、例えば国道と都道の交差点では当事者がその都度交渉して対応を決める必要があります。そのため現実には、交差点内ではほとんど設置されませんでした。交差点内は交通事故の危険が大きく、自転車走行空間を確保する必要性が高いにもかかわらず、自転車利用者には全く関係のない『行政の縦割り構造』によって、これまで整備が進まなかったのです」(内海氏)

さらなる自転車走行区間の確保を

NPO自転車活用推進研究会が都に提案した「TOKYOサイクルネットワーク(案)」

 もっとも内海氏にとって、今回の都の施策は「諸手を挙げて歓迎」というわけでもない。実は都の発表に先立つ4月7日、自活研は都に「TOKYOサイクルネットワーク(案)」を提出。都区内全域と五輪・パラリンピック競技施設を網羅する総延長約400kmの自転車走行空間を整備するよう提言している。  自活研の提言と比較すると、都の施策は対象区域が限定され、互いに離れていることが見て取れる。 「都はこれにとどまらず、提言に沿う形で自転車走行空間のネットワーク化を進めてほしいですね」(内海氏)  温暖化対策や健康増進、渋滞抑制など、様々な効果が期待される都市部での自転車利用。東京五輪・パラリンピックに向け、都内の自転車利用拡大に弾みがつくかが注目される。 <取材・文/斉藤円華>