太陽光関連事業者の8割が“政策リスク”を理由に将来を悲観
太陽光発電事業者は新規の事業プランで融資を受けられなくなるなど、参入のハードルが高くなったわけだが、そもそもの発端は電力会社による「接続保留」だった。昨秋実施のアンケート調査では、「自然エネルギーをめぐる政策リスクが、太陽光発電業界のマインドそのものを冷え込ませた」ということが示されている。
アンケート調査は自然エネルギー財団が太陽光発電事業者、販売・施工会社など888社を対象に実施し、2週間で125件(14%)の回答があった。それによると、今後3年間の事業見通しで「太陽光発電市場が縮小していく」と答えたのは約8割(78%)に上った。一方、「市場が拡大していく」と捉えているのは9%にとどまり、1年前の46%から激減した。
また、太陽光発電事業の問題点とリスクを複数回答でたずねると「買い取り価格の見通しがない」(77%)、「政府の導入目標が不透明」(65%)、「系統連系(接続)の確保」(62%)などとなった。また、これら3要素はいずれも前年よりも大きく増加した。
財団では「これらの要素は、まさに国の政策によるものであり、政策の方向性や制度のあり方がリスクとして幅広く認識されている」と指摘。その上で政府に、自然エネルギーの最大限の普及拡大に向け、中長期的かつ明確な目標を示すべきだと提言している。
また、「その実現には政府が電力会社に強力なイニシアチブを発揮し、FITを安定的に運用することが必要」とした。
太陽光発電をめぐるFITの制度変更は、今回の買い取り抑制に加え、毎年度に実施される買い取り価格の見直しがある。今年度は適正利潤に上乗せされてきた「特別利潤」が6月からなくなり、メガソーラーで1キロワット当たり32円から27円(7月以降、価格はいずれも税抜き)に引き下げられる。関係する事業者らにとってはまさに「逆風」といえるが、これらの影響は筆者の取材過程でも思い当たるところがある。
2月に都内で開かれた太陽電池の見本市「PV EXPO」で出展社の一つ、シャープに今後の展望をたずねると「制度変更に粛々と対応する」と、保守的な答えが返ってきた。また、国と民間が連携して市民による自然エネルギー事業の立案を後押しする「まちエネ大学」の横浜校では、FITに依存しない事業プランが優秀賞に選ばれた。同プランの立案者は「FITはあえて意識しなかった」と話した。
太陽光の発電コストは下がる傾向にあるため、買い取り価格の引き下げ自体はやむを得ない面がある。風力ほかの自然エネルギーで買い取り単価が据え置かれたのは、太陽光に偏った設備導入を是正する意味合いもある。また、この「逆風」も、事業者や市民にイノベーションを促すという点ではプラスの側面を持つだろう。
しかし3・11以降、日本の自然エネルギー発電量(水力除く)の割合は1.4%(2011年度)から2.5%(2013年度)と大きく増加していて、そこにFITが大きく貢献しているのは明らかだ。事業者の意欲を大きく削ぐ形での制度変更が、果たして自然エネルギーの普及に寄与するのだろうか。 <取材・文/斉藤円華>
今年1月に運用が見直されたFIT(自然エネルギーの固定価格買取制度)では、電力会社が設定した「接続可能量」(自然エネルギーが送電できる上限の量)を上回る場合、太陽光・風力発電事業者は電気の買い取りが「自動的かつ無補償」で抑制されるようになった。
この制度変更で、「太陽光発電の市場が拡大する」は9%に激減
「逆風」はプラスかマイナスか
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