王者トヨタと勝ち組マツダが提携発表。ただ“具体的な話”はこれから

 2兆円超えの過去最高益を達成したトヨタ自動車と、クリーン・ディーゼルエンジンの分野で勝ち組のマツダが、「クルマが持つ魅力をさらに高めていく」ことを念頭に、両社の経営資源の活用や、商品・技術の補完など継続性のある協力関係の構築に向けた覚書に調印したと発表した。  トヨタとマツダは、すでにトヨタのハイブリッドシステム技術のライセンス供与や、マツダのメキシコ工場におけるトヨタの小型車生産などで業務提携を行っている。
豊田章男社長

トヨタ自動車・豊田章男社長

「マツダは『SKYACTIV技術』『魂動デザイン』など、基本にこだわったクルマづくりを進めるとともに、次代を担うクルマ・技術に挑戦し続けておられるクルマ会社だと思っています。私たちの目指す『もっといいクルマづくり』を実践されている会社であり、志を同じくする企業同士で新しい『クルマの魅力向上』に取り組めるという期待感で一杯です。取り組みを通じて『次の100年もクルマは楽しいぞ!』というメッセージを世界に発信できれば、こんなに素晴らしいことはありません」(トヨタ自動車・豊田章男社長)
小飼雅道社長

マツダ小飼雅道社長

「トヨタは地球環境保全、モノづくりの将来に責任を果たされようとする強い意志を持たれた企業です。また『もっといいクルマづくり』という目標に向け、さらなる革新をされようとする真摯な姿勢に尊敬の念を抱いております。さらには創業以来地元を大切にし、地元から愛されていることにも共感します。本協業により、さらなる『クルマの魅力向上』が実現でき、お客様にとっての真の価値の向上と広島のモノ造り力向上にもつながることを期待しています」(マツダ小飼雅道社長)  13日に行われた緊急記者会見で配られた資料はA4のペーパー1枚のみ。両社社長の冒頭のあいさつのあと、異例の30分にわたっての質疑応答が行われ、集まった報道陣が何とか情報を引き出そうと試みたものの、両社の協力関係で新たに開発されるクルマなど具体的な発表はなく、「マツダのクリーン・ディーゼルを搭載したアクアをトヨタが出します!」といった、誰にでもわかりやすい話は聞かれなかった。 ⇒【動画】http://www.youtube.com/watch?v=RSZgFY3OCBU  ただ、今回の業務提携発表の約1年前に、豊田章男社長がマツダを訪れた際、テストコースで自由にマツダのクルマを乗るなど、積極的な交流が行われていたことはわかった。章男社長は、マツダを訪れた際、小飼社長に社長室ではなく、レーシングスーツに身を包んだスタッフと全マツダ車が用意されたテストコースに招待されたことが、きっかけだったとも話している。  デミオのような小型車から、CX-5のようなSUV、ロードスターのようなスポーツカーなど、今や楽しい日本車の代表格を揃えるマツダと、巨大な資本と環境技術や安全技術で進んでいるトヨタで、なんかやりましょうということだろう(会見では、トヨタといえばすぐにお金と言われるが、私はおサイフではないと、いつものごとく笑って章男社長は言っていたが)。  トヨタはスバルやBMW(ドイツ)などとも提携しており(スバルとは資本提携)、マツダはフィアット(イタリア)などとも提携しているが、今回のトヨタとマツダの提携発表は、そうした従来の提携よりも、もっと中長期的に何かやりましょうということだ。今後、両社で組織する検討委員会を立ち上げ、環境技術、先進安全技術といった分野をはじめとする、互いの強みを活かせる具体的な業務提携の内容の合意を目指していくとしている。<取材・文/HBO取材班 撮影/我妻慶一>