氷河期世代はチャンス!? 中年転職市場に変化あり

 転職限界年齢は35歳との定説があったが、昨今ではその常識が覆えされている。転職サービス「DODA」の調べによれば、40歳以上の転職成功者が、’07年から5.4倍に増えているという。転職市場に何が起きているのか。 「今、大企業ではベンチャー・中堅企業からの中途採用が活発。かつては新卒の一部“勝ち組”のみが入社できていましたが、今はキャリア下克上の時代なのです」
40代の転職成功者

40代の転職成功者は上昇傾向(出典:DODA)

 そう話すのは人材コンサルタントの柴田励司氏だ。昨今の転職市場の活況ぶりには、アベノミクスの影響も大きいが、さらに企業が求める人材の変化もあるという。 「世の中がダイナミックに変化するなかで、企業内の人材だけでは賄えない案件が増えています。大企業の社員は高学歴で新卒時点では優秀な人ばかりですが、明確な答えがない今は、これまでにないプロジェクトをやり遂げられる“規格外”の人材が必要になっている。そういった人材は、やはりベンチャーや外資に多いんです」  また、そうした人材はこれまでもヘッドハンティングされてきたが、それは社長・役員クラスが主流だった。しかし今では、部長・課長クラス、または中年のヒラ社員にまで広がっているという。 「社会のルールを一から教育する若手よりも、今は経験を積んだ即戦力に需要があります。また、特に課長級を担う30代後半は、就職氷河期世代で、大企業でも特に層が薄いゾーンなのです。なので、今後はさらにその世代の需要が高まってくると思われます」  中年求人が増えるなか、狙い目の業界はあるのだろうか?
柴田励司氏

柴田励司氏

「今後、まちがいなく従来とは異なる人材があらゆる業界で必要になる。例えば自動車業界。日本で主流のハイブリッド車は、米・カリフォルニア州では、エコカー認定されませんでした。ということは、燃料電池か水素自動車へ移行しなければなりません。すると車の構造は大きく変化し、従来の部品は使われなくなる。しかも最近は車もネットとの連動が進んでいます。こういった変革期には、従来の発想では対応できません」  では、中年が転職を志す際に求められる条件とはなんなのか。 「管理職と現場プレーヤーとでは、求められるスキルは別ものです。転職に備えるならば、現場プレーヤーとして専門性を高めるべきでしょうね。ただ、専門的なスキルを持たない人でも、『4つのポータブルスキル』と『見た目』が加われば、転職の可能性は広がります」  柴田氏が説くポータブルスキルとは、以下のようなものだ。 (1)自分で考えそれを文字で書ける (2)さまざまな情報を集め、端的にまとめられること (3)コミュニケーション面では、相手の表情を読み、相手に伝わる形で自分の言いたいことを伝える力を持っていること (4)人を巻き込む熱量があること  加えて、意外にバカにできないのが「見た目」だという。 「見た目より中身で評価してほしいと思う人は多いでしょうが、くたびれたスーツに、手入れされていない髪型をした人では、画期的なアイディアが出てくるとは思われない。特に面接のような短い時間の場合、やはり見た目は重要な判断要素となってくるんです」

オジサンの転職機会が増える一方で新卒は格差が拡大中?

 今年から制度が変わった新卒の就活市場。必死に就活に励む学生も多いだろうが、柴田氏は「実際に大企業が最初に面接するのは全新卒のうちたった7%だけなんです」と語る。同氏は若者の就職機会を改善する「PHAZE」というプロジェクトで、その数値を割り出したそうだが、これには就活サイトの弊害がある。 「一つのサイトに掲載企業が増えるほど、学生の目は有名企業ばかりに集中します。その結果、有名企業には膨大なエントリーが集まり、企業側も学歴などわかりやすい基準で判断せざるを得なくなる。関東ならそのボーダーはMARCH以上。7%とは、それら偏差値上位の大学の生徒を指す数字です」  なかには部活動の成績や語学などが評価されることもあるが、それも限られた一部の話だという。 「この傾向は今年から拍車がかかるでしょう。選考開始は8月で内定発表はこれまでどおり10月なので、企業側も“短期決戦”で採用を決めるからです。結果、誰も望んでいない選考基準の画一化が進んでしまう。最終学歴に関係なく実力で活躍の舞台へのチケットをゲットできる場が必要です」 【柴田励司氏】 人材育成コンサルタント会社Indigo Blue代表。『優秀なプレーヤーは、なぜ優秀なマネージャーになれないのか?』ほか人事・働き方の著書多数 <取材・文/HBO取材班>
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