アップルウォッチの未来がとてつもなく険しい理由

アップルウォッチ  満を持して発売された「アップルウォッチ」。世界中のファンが待ちに待った製品だけに発表直後の注目度はかなり高かった。しかし、詳細が徐々に明らかになるにつれ、専門家やファンの評価は下がる一方。事実、ロイター通信が3月にアメリカで行った調査では、69%が「購入に興味なし」と回答するなど、発売前にして雲行きはかなり怪しかった。 「2つの理由から、アップルウォッチには厳しい現実が待ち受けていると思います」と話すのは、IT・モバイル分野に詳しい慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏だ。 「1つ目の理由は“トレンド”です。今、腕時計のトレンドは『スウォッチ』など安価でファッショナブルな路線と、何十万円もする高級腕時計の路線へと分かれています。その中間をいくのが、『セイコー』や『シチズン』などの機能重視な路線。クオーツ式時計は世界市場を一時席巻しましたが、この20年の間にケータイやスマホに取って代わられました。そして、機能性を謳うアップルウォッチはまさにこの路線。アップルといえども20年で培われてきたトレンドを覆すのは容易ではない」  アップルウォッチはスポーツ用など3つのラインナップが存在し、ベルトの種類も8つある。高級路線の登場するなど、バリエーションが豊富であることも特徴だ。しかし、これも夏野氏によれば「ラインナップを増やすことで、ファッション性やラグジュアリー感を打ち出してもライバルは世界中の名だたる有名ブランド。厳しい戦いが待っているでしょう」という。

「ヘルスケアサービス」で一発逆転なる……か?

夏野 剛氏

夏野 剛氏

 とはいえ、アップルウォッチにはヘルスケアやフィットネスサービスという強力な武器(付加価値)があるのではないか? アップルは発表会で全面的にプッシュしていたが、夏野氏はこう続ける。 「大前提として、ヘルスケア系のサービスをもっとも必要とするのは病気経験者です。日頃から運動をしている意識の高い人は利用するでしょうが、健康な人の多くはあまりメリットを感じません。自分の行動パターンに照らし合わせるとわかると思います。このポイントは、ドコモなどの通信キャリアも見落としている部分でもあります。つまり、ヘルスケアサービスがマスに受け入れられることは難しい。これが、アップルウォッチの未来が厳しいと感じる、2つ目の理由ですね」  一部報道によれば、アプリの連続駆動時間は約3時間、待機時はスタンバイモードになることを考慮しても一日1回のペースで充電が必要になるとのことだ。 「正直、電池の持ちは厳しいと言わざるを得ませんね。ヘルスケアは、移動距離や消費カロリーといった健康状態を常に測定することが肝になりますから。加えて、腕時計の小さな画面上でできることは限られています。SNSやメッセージングを使うにしても、アップルウォッチは通知画面といった位置づけでしょう。発売当初は好調でしょうが、正直、アイフォンのようなメガヒットはかなり厳しいと思います」  ネットでは「アップルが世界一の時計メーカーになる」と期待する声もあったが、夏野氏の言葉からすると、アップルウォッチの道のりはとてつもなく険しく、購入を検討している人は少し様子見したほうがいいのかもしれない。  しかし、夏野氏は最後にこう付け加えた。「厳しい現状ですが、これはアップルにとっての“チャレンジ”でもあります。アップルは音楽業界などのさまざまな圧力にも屈することなく、我々の期待をいい意味で裏切る製品やサービスを発表してきた会社です。この状況をどう覆すのか、一人のアップルファンとして楽しみです」  どのようにワクワクさせてくれるか、アップルのお手並み拝見だ。 【夏野 剛氏】 慶應義塾大学特別招聘教授。KADOKAWA・DWANGOやグリー、ぴあなど複数の取締役を兼任。ドコモ在籍時には「iモード」などを立ち上げた <取材・文/HBO取材班>