鉱山ストでプラチナ需給が逼迫! エルニーニョで大豆が高騰!?
’00 年以降、世界的な金融緩和で資金がダブつき、新興国の急激な経済成長という追い風もあって、コモディティは右肩上がりに値を上げてきた。ところが、昨年から上昇の“スーパーサイクル”は下落に転じ、今年に入ってコモディティは依然、歴史的高水準にあるとはいえ軟調が続く。
象徴的なのが金だ。’11 年、史上最高値の1オンス=1923ドルをピークに下降を続け、昨年1年間で30%近くも急落。現在1250ドル付近まで値を下げている。“コモディティの時代”は、終焉を告げるのか……。
だが、トーキョー・トレーダーズ・タイムズの小針秀夫代表は、そんな見方に疑問を呈した。
「ゴールドに顕著ですが、コモディティの下落は、世界経済を牽引してきた中国経済の腰折れの懸念や、新興国の成長に翳りが見え始め、これらの国の産業需要が減少したことが理由のひとつです。加えて、新興国にジャブジャブに資金を供給してきたアメリカが、QE(量的緩和)を縮小させるテーパリングに踏み切ったことで、マネーが株や債券にシフトしたことも大きい。ただ、こうした資金の流れのなかでも、まだら模様ではあるものの、現に上昇している銘柄も少なくないことから、コモディティ全体が下落に転じたわけではないと考えます」
確かに、コモディティの騰落率(
http://hbol.jp/?attachment_id=3409)を見ると、値下がりした銘柄もある一方で、高パフォーマンスのコモディティがズラリと並ぶ。ドットコモディティの吉田哲氏が続ける。
「昨年、金など、メジャーなコモディティが下落したので、コモディティ全体が下落しているように感じられるかもしれませんが、今年は年初から15%以上も高騰しているNYパラジウムやシカゴ大豆を筆頭に、NY金やWTI原油なども実は底堅い値動きを見せています」
コモディティの騰落率
好調と言えないまでも、決してすべての銘柄が下げているわけではない……コモディティの下落は、昨年の金の急落のインパクトが大きかったために刷り込まれた“イメージの産物”と言っていいのかもしれない。
実際、「ここへきてプラチナが徐々に値を上げている」と指摘するのは、コモディティー・インテリジェンスの近藤雅世代表だ。プラチナの需給(
http://hbol.jp/?attachment_id=3414)は’12 年には供給不足に転じているが、今後さらにこの傾向に拍車がかかりそうな雲行きなのだ。
「世界のプラチナの7割は南アで生産されていますが、その3大プラチナ鉱山が1月からずっと賃上げを巡りストライキを行っている。この間に生産できなかったプラチナは’14 年の生産量の40%に及んでおり、今後、需給は極めて逼迫するでしょう。プラチナの6割は自動車の触媒として使われており、ガソリンや軽油を燃焼するクルマには不可欠な素材です。中国をはじめとする新興国のモータリゼーションは止めようがなく、これらの国の大気汚染が激しくなるなか、各国政府は国産車に対して触媒装置の設置を義務付ける動きもある。プラチナは今後、さらに上昇すると思います」
今年に入り上値が重い大豆、トウモロコシにも上昇の兆しが見えると指摘するのは、前出の小針氏だ。
「世界の大豆、トウモロコシの半分がアメリカで生産されているが、米農務省によれば、今年の生産量は史上最高になる見通し。こうした要因で上値が重いわけですが、にもかかわらず、シカゴ市場の大豆先物は5月に15・36ドルと、年初来高値を更新し、直近の安値から実に20%超の大幅な値上がりとなっています。豊作の予想が出たにもかかわらず、急騰した理由はエルニーニョ。つまり、今夏は天候が高温乾燥になり、干ばつになる可能性があるためです。そうなれば、’12 年の大干ばつ再来のシナリオも否定できません。この年、大豆とトウモロコシは史上最高値をつけました。また、今年5月の年初来高値の一因は、世界最大の大豆消費国・中国で飼料向けの需要が増加するとの観測が高まったことにあります。加えて、中国では鳥インフルエンザが拡大し、食肉需要が後退する一方、大豆の需要が高まりそうです」
コモディティの代表格・金の下落の陰で、プラチナや大豆、トウモロコシは急騰の気配を漂わせている今こそ、絶好の仕込み時と言っていいだろう。
【小針秀夫氏】
トーキョー・トレーダーズ・タイムズ代表取締役。コモディティオンラインTV(
http://commodityonlinetv.com/)プロデューサー。商品市場解説に定評がある
【吉田哲氏】
商品先物のオンライン取引で預かり資産、売買高№1のドットコモディティ株式会社・コモディティアナリスト。テレビ、ラジオなどで精力的に情報を発信
【近藤雅世氏】
三菱商事で主に貴金属分野に携わった後、コモディティー・インテリジェンス代表取締役。『
商品先物取引 基礎知識と儲けの方法』(すばる舎)ほか、著書多数
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