労基法改正案の新制度は「定額¥働かせ放題」である

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photo by SnippyHolloW(https://www.flickr.com/photos/snippyhollow/) CC BY-SA 2.0

 4月3日、ついに閣議決定した労働基準法改正案。ハーバー・ビジネス・オンライン読者にとっても、他人事でない話題なので、注視していた方もいるかもしれない。  各メディアでは盛んに「成果で年収が決まる」とか「ダラダラ残業をなくして成果で報酬を決める」などと喧伝されており、「それならいいじゃん」と思う人もいるかもしれないが、実はあの改正案、よく読めばまったく違うのだという。  ブラック企業被害対策弁護団代表である弁護士の佐々木亮氏は語る。 佐々木亮弁護士「確かに当初は政府の説明では『成果に応じて』などと言われていました。しかし、実際の法案要綱を見てみると、そんな文言はどこにもないんです。法案要綱の(六)が新しく導入される『特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)』です。『成果型』などと謳っていますが、その中に書いてある項目を見ても『成果に応じた報酬』についての記載はないんです。全文解説を私が書いていますので、そちらをお読み頂ければより細かくわかると思います。このように成果に応じた報酬に関する記載などどこにもなく、ただ単に残業代が発生しないことや休憩や休日の規定が適用されないことだけが書いてある『定額¥働かせ放題』とも呼べるようなものなのです」 ●労働基準法等の一部を改正する法律案法案全文(pdf) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/189-43.pdf ●佐々木弁護士による全文解説 http://bylines.news.yahoo.co.jp/sasakiryo/20150406-00044594/  この「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」については、「金融ディーラー」「アナリスト」「金融商品の開発」「研究開発」「コンサルタント」など、職務の範囲が明確な専門職であり、さらに基準年間平均給与額の三倍程度(概ね1000万程度)という年収要件があるので、「俺には関係ない」と思う人もいるかもしれないが、そんなに甘い話ではない。 「まず、この対象も年収要件も広げていく気満々です。すでに経団連からはホワイトカラーエグゼンプションに関する議論のときに年収400万円以上が残業代ゼロの対象として望ましいと提言を出していたほど。政府もかつての派遣法の時などは、最初は例外的な場合のみ派遣可能で拡大しないと言っていたのに、今では派遣禁止業務以外は派遣可能になったように言葉を裏返して拡大することは何度もやってきた。しかし、今回に至っては、ハナから拡大することを否定も肯定も避けているほど。その点で、かつて話題になっていたホワイトカラーエクセプションよりさらに酷い改正案だと言えます」 ⇒「決して他人事ではない『定額¥働かせ放題』法案」 http://hbol.jp/32618 に続く <取材・文/HBO取材班> 佐々木亮●弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に活躍。労働事件は労働者側のみ。(Twitterは@sskryo