ビッグビジネスを生むヤンキーマインド研究
2014.10.26
日本の人口の半数以上を占めると言われているマイルドヤンキー。彼らの消費動向を探ると、今後成長していく企業が見えてくるという。オススメのマイルドヤンキー株をアナリストが解説する。
現在、元気ハツラツの企業群に共通するのは、消費者の「ヤンキーマインド」に対する強いアピールだ。なにしろ、ヤンキー文化研究者の斎藤環氏の見立てでは、「ヤンキー的なるもの」に共感する日本人は、全体の約8割に上る。もはやヤンキー市場≒日本といっても過言ではないビッグビジネスには、ヤンキーの支持が不可欠なのだ。
「ヤンキーの特徴としては、とにかく気合で物事を乗り切ろうとする反知性主義、一緒に同じ夢を見てくれる家族や仲間との絆が最優先、そして伝統のありそうなものへの漠然としたリスペクト。この三つです。坂本龍馬や白洲次郎、野口英世などが、特に目立つ実績もないのに日本で人気なのは、彼らの気合主義や家族との物語や見果てぬ夢が、ヤンキー好みだからですよ」
かつてストリートを荒らした攻撃的な不良たちは、狭義のヤンキーにすぎない。痛いケンカや厳しい上下関係はイヤだが、斎藤氏が挙げた三点は、多くの人に思い当たるフシがあるだろう。そして、こうしたマイルドなヤンキー層が、日本人のマジョリティを占めているというのだ。
「本の世界なら、オタク向けでは売れてもせいぜい10万部単位。一方、ヤンキーを掴めれば100万部が見込めます。三億部も売れている『ワンピース』なんて、夢、仲間、絆のオンパレード。ヤンキーが出てこないけれども、ヤンキーの精神だけを抽出した隠れヤンキー漫画だからこそ、これだけ共感を集めているんです。ジブリも同じ。あれは宮﨑駿というオタクが作ったものを、ヤンキーを知っている鈴木敏夫プロデューサーが、糸井重里を使って宣伝するから売れているんですよ」
さらに日本社会の特異な点として斎藤氏が挙げるのは、こうしたヤンキー文化が社会階層の上下を問わず浸透していることだ。
「日本では、オタクも成功してカネを持ってリア充になると、ヤンキー化していくんです。IT起業で莫大な財産を築いたのに、著書を売るために全国の書店を行脚してみたりね。欲望に間接的にアプローチするのがセレブのたしなみである欧米とは対照的です」
だが、こうした内面的な特徴を集めるだけでは、まだヤンキーの深層にリーチすることはできないという。
「ヤンキー文化には、核となる精神や思想がなく、内面から定義付けるのは難しい。むしろ、この文化の真髄が現れているのは、様式美へのこだわりという、悪趣味な外面部分だと思います。ジーンズに唐草などの和柄を入れたり、iPhoneを蒔絵のジャケットで包んだりね。日本人の心が宿るとされる伊勢神宮も、実はヤンキー的です。20年ごとの式年遷宮のたびに、巨大化して金箔が貼られ、バッドセンス化している。そして教義は何もなく空っぽです。ヤンキーが伊勢神宮を大好きなのは、当然なんですよ」
【斎藤環氏】
精神科医、サブカルチャー批評家。『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』『ヤンキー化する日本』などの著書で、古事記の時代から現代まで続く日本ヤンキー文化への分析を展開
取材・文/野中ツトム、中村未来(清談社) 林バウツキ泰人 田村竜馬 イラスト/TOMOKUNI チャート協力/楽天証券
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