"Business man hand" by kev-shine (Creative Commons Attribution 2.0.)
LINEで爆発的に広まった「iTunesカードを買ってきてくれ」という詐欺。あれは中国人らしき人物がアカウントを乗っ取って発信されるため、うっかり知人からの頼みだと思って引っかかる人もいたが、次第に「どうやったら面白いネタとして対応できるか」を競うような余裕も生まれ、収束していった。
しかし、その「プリペイドカードを買わせて、その番号を聞き出す」という手法だけ、既存の架空請求などの詐欺集団が継承しているようなケースが頻発している。
国民生活センターによれば、全国の消費生活センターにプリペイドカードを不正に取得しようとする「詐欺業者」とのトラブルが複数寄せられるようになっているという。
主な手口としては、以前からあった詐欺とよく似ている。国民生活センターの報告では
「スマートフォンに有料サイトの料金を請求するメールが届いたので心配になり、メールを送ってきた業者に電話をした。すると業者から『約50万円の未納料金がある。今日中に払わないと裁判にする』と言われて怖くなった。そこで、業者に言われたとおりにコンビニの端末で数千円のプリペイドカードを約70枚、約50万円分買い、番号が分かるようにして業者にファクスしてしまった。支払う必要があったのだろうか。だまされたと思う。返金してほしい」(受付年月:2015年1月 契約当事者:20歳代、男性、無職、北海道)
「パソコンで無料のアダルト動画サイトの画像をクリックし、年齢を入力してクリックした。すると突然『入会完了』と10万円の料金を請求する画面が出た。サイトへ『入会するつもりはなかった』ので電話をしたところ、『本当は16万円のところを10万円にしているので、退会するなら10万円を払ってほしい』と言われた。仕方なく支払うことにして、サイトの指示にしたがってコンビニへ行き、店頭で販売されていた数万円のプリペイドカードを5枚購入した。購入したらサイトへ電話をかけるように言われていたので電話をかけて、プリペイドカードの発行番号を5通り伝えた。支払ってしまった分についてはあきらめるが、今後何か起きないか心配だ」(受付年月:2014年12月 契約当事者:50歳代、男性、給与生活者、千葉県)
といった架空請求風のものから、
「一昨年、友人に紹介されたエステ店で『1年間無料でエステができる話がある』と言われた。『無料でエステを受けるためには40万円の化粧品一式の契約をすることが必要だが、その費用はエステ店が毎月引き落とし日に合わせて口座に入金するので、実質無料』という説明を受け、化粧品一式の契約書にサインをした。支払いのため、業者の指示どおり、クレジットカードを作成し、通販サイトで電子ギフト券40万円分を購入し、業者のメールアドレスに送付した。業者から口座への入金が一回もないまま、連絡が取れなくなってしまい、業者に指示されてリボルビング払いにした電子ギフト券の代金を自分で支払っている。忙しくエステは受けていない。化粧品一式は後日自宅に届けると言われたが届かなかった。だまされたので支払った代金を返金してほしい」(契約当事者:20歳代、女性、給与生活者、関東地方)
といったエステ詐欺のようなものなどが挙げられている(事例はすべて国民生活センター資料より)。
詐欺犯罪に詳しい人物は語る。
「犯罪用に銀行口座などが取り締まりによって開設しにくくなったり、あるいは引き落としのタイミングを狙った摘発などを警戒し、LINE詐欺で使われた手口を転用し始めたのではないかと思われます。もっとも、LINE詐欺と全体の絵図を描いている大元は同じである可能性もあります」
国民生活センターは、プリペイドカードを利用したこうした手口では、、詐欺業者は消費者からプリペイドカードに記載されている番号等を聞く等して価値を取得した後、すぐに使ってしまいます。そのため、消費者がだまされたことに気づいた時には価値が残っていないことがほとんどで、トラブル発生後に返金を求めることがより困難であるとして注意を喚起している。
「プリペイドカードを利用してはいますが、手口自体は昔のものとほとんど変わらない。多くの詐欺が根幹のシナリオはほとんど変わらないのと同じです。それなのに、ちょっと違うアイテムが登場するとまた引っかかってしまう人が現れる。身に覚えがない請求に反応しない、カード番号などを他人に伝えないなど、当たり前のことで防げるのですが……」(前出の詐欺に詳しい人物)
<取材・文/HBO取材班>