子どもと正面から向き合うことの大切さを伝える「学校ドキュメンタリー」

 川崎市の中1殺害事件を受けて文部科学省が緊急調査を実施。生命・身体に被害の恐れがある児童・生徒が全国で400人に上ることが明らかになった。それでなくても、現在の子どもの学校生活には問題が山積み。そんな学校を舞台にした2本のドキュメンタリー映画が全国で上映中だ。

異文化を受け入れる地道な努力

バベルの学校

『バベルの学校』(2013年/フランス/ジュリー・ベルトゥチェリ監督)より

 まずは『バベルの学校』(2013年/フランス/ジュリー・ベルトゥチェリ監督)。フランスでは、移民の子どもを年間2万人も受け入れているという。映画はパリの中学校が舞台だ。移民の子どもたちは、フランス社会で生きていくために「適応クラス」という教室に入る。そこはまさに人種と国籍のるつぼ。映画に登場するだけでも、アイルランド、セネガル、ブラジル、中国などなど、20の国籍がひしめく。  移民としてやってきた理由も難民、仕事、留学など様々だ。文化も背景も言葉も違う。何かについて議論すれば、たちまち対立の様相を帯びてくる。どうなる適応クラス!?  けれども裏返せば、それは自由に意見を言い合える環境がクラスの中にあるということ。学校ではイスラム教徒の女子生徒もスカーフを外さなければならないが、そこには「自由・平等・友愛」を基礎としながら、意見の多様さや文化の違いを受け入れるフランスの懐の深さを見ることもできる。  そして先生は親身に生徒と保護者の話を聴き、最善の選択ができるようサポート。その辛抱強さと、生徒への信頼にはため息さえ出る。  近年、EU諸国では移民への風当たりが強まり、フランスでも極右政党が伸長。しかし映画に登場するセルヴォニ先生は「違いとは一つの豊かさの象徴」と言い切る。この言葉は、異文化に対して内向きにならないよう、社会が努力を続けてきたからこそ出てくるものだろう。生徒が1年後、どんな風に成長しているのかが見所だ。  日本でも、人口1億人を100年後も維持するため、外国からの移民を積極的に受け入れていこうという議論が盛んに行われている。移民先進国であるフランスの学校から学ぶことは多そうだ。

発達障害の児童も“問題児”も区別することなく、同じ教室で学ぶ

『みんなの学校』(2014年/日本/真鍋俊永監督)より

 ところ変わって大阪市。「すべての子どもの学習権を保障する」という理念を掲げ、不登校ゼロを目指す「大空小学校」を描いた『みんなの学校』(2014年/日本/真鍋俊永監督)。  大空小には「特別支援学級」がない。特別支援学級とは、発達障害がある子どもや、授業に集中できない子どもらが学ぶために設けられたクラスのこと。つまり、特別支援教育の対象となる子どもも、そうでない子どもも、同じ教室で学ぶのが大きな特色だ。さらには他校で厄介者扱いされ、放り出された“問題児”も転校してくる。  それだけ聞くと「学校生活が成り立つのか? 学習の遅れは出ないのか?」と心配になる人もいるだろう。しかしきちんと授業は成り立つし、問題を抱える子どもへの支援もちゃんと行われているのだ。でもどうやって?  子どもと向き合うのは担任教師だけではない。校長先生自ら、一人ひとりの子どもと正面から向き合う。さらには保護者や地域の大人までも。子どもの成長に誰もが当事者として関わる仕組みが作られているのだ。だから体罰は不要だし、子ども同士が支え合う関係も作られていく。  しかし何と言っても、「バベルの学校」も「みんなの学校」もとにかく先生が魅力的。大人のロールモデル(お手本)を学ぶ意味でも、2作品はオススメだ。 <取材・文/斉藤円華> 『バベルの学校』http://unitedpeople.jp/babel/ 『みんなの学校』http://minna-movie.com/
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