学歴の低さをバカにされるのが悔しい!――【石原壮一郎の名言に訊け】~マツコ・デラックスの巻~

怒る男

写真はイメージです。

Q:俺は名もない三流大学卒だ。高校時代は部活に熱中していて、まったく勉強しなかったから、その学校しか入れなかったのは仕方ない。だけど、社会に出てからの学歴差別は想像以上だった。学歴の話になって学校名を言うと、必ず「ああ……」という微妙な反応をされるし、学歴の高いヤツら同士の飲み会には呼んでもらえない。学歴が高くても仕事ができないヤツはいっぱいいるのに。この悔しさ、どう晴らせばいいんだ。(東京都・25歳・営業) A:お言葉を返すようで恐縮ですが、学校名を言ったときに、どういう反応なら満足なんでしょうか。「すごいですねー!」と言われたら、きっと腹を立てますよね。微笑みながら、相手としては精いっぱいフラットな調子で「そうですか」と言ってくれているとしても、きっと薄ら笑いでバカにされたととるんでしょうね。飲み会のことも、今のあなたがいかにも学歴コンプレックスの塊で、酔っ払ったら「お前らは高学歴だから」と嫌みのひとつもかましそうな気配を漂わせているから呼ぶ気がしないのではないでしょうか。  学歴コンプレックスというのは、じつに厄介です。どうでもいい人にとってはどうでもいいのに、気にする人は凄まじい勢いで気にします。もちろん、周囲の人はぜんぜん気にしていません。学歴で人を見下したり、逆に妬んだりするのは、同様に学歴コンプレックスを抱えている人だけです。そんな人と戦って、何が楽しいんでしょうか。  マツコ・デラックスさんが、学歴についてこんな面白いことを言ってくれています。 【アタシ美容学校出身なんで、出版業界もテレビ業界も周りは高学歴ばかりで逆に優越感感じる。東大だの京大だの出てる連中が、こんな美容学校しか出てないオカマに頭下げるのね、って思って。逆に言うと、この人たち何のために大学行ったの?って】  あなたに必要なのは、悔しがることで戦っているような錯覚を覚えることではなく、この気概ではないでしょうか。高学歴なヤツらなんて、優越感のネタにしてやればいいんです。「いい学校に行ってて、その程度か」とか。それもまたねじれた学歴コンプレックスではありますが、勝手に被害妄想をふくらませて悔しがっている学歴コンプレックスよりは、だいぶマシです。  ただし、マツコ・デラックス方式で優越感のネタにしようと思ったら、それなりに実績を積んで自信を身につける必要はあります。もしかしたらあなたは、たいして仕事ができなくて自信もなくて、その理由を学歴のせいにしたいだけなんじゃないでしょうか。高学歴しか威張ることがない人と、学歴の低さを言い訳にする人は、同じぐらいトホホです。  マツコ・デラックスは【意地張って生きて何が悪い!】とも言っています。意地を張って生きていきましょう。そして、どうせ意地を張るなら、「高学歴なヤツらを見返してやる」なんて前提からして卑屈な意地じゃなくて、できれば「意地でも学歴コンプレックスなんて持たない。そんなものは必要がない生き方をする」という方向で。

【今回の大人メソッド】コンプレックスの本当の原因は、たいていほかにある

学歴だけでなく、外見やら出身地やら、人はコンプレックスのネタには事欠きません。しかし、たいていの場合、当人にとっての最大の課題は、コンプレックスを感じていることそのものではなく、ほかにあります。コンプレックスにとらわれていると思ったら、そのことでウジウジするのではなく、自分が目をそらしている本当の問題点を探してみましょう。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)