電源構成めぐり議論始まる。政府資料は原発に有利?

洋上風力発電

海外では洋上風力発電もさかんだ (CC) Beverley Goodwin.

 将来における国内の電源構成(エネルギーミックス)を議論する国の専門家会合が、今年1月末から始まった。昨年策定された「エネルギー基本計画」を踏まえたものだが、政府の資料は原発維持を強く意識した内容となっている。  エネルギー基本計画では原発について「可能な限り低減させる」とする一方で「重要なベースロード電源」と位置付ける。それを踏まえて政府がまとめた資料(※1)には、こんな記述があった。 「低炭素の純国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給の安定性に寄与する重要なベースロード電源」 「運転コストが低廉」というが、別に廃炉や核のゴミの処理、事故リスク費用などのコストがかかることには触れていない。  しかも地震が頻発する日本で、ひとたび原発が過酷事故を起こせば、何万人もの人が長期間の避難生活を強いられる恐れが生じる。ところが、その点は「安全性の確保を大前提に」の一言で済ませている。

「ドイツは電力輸入国」というミスリード

 また、同資料の「各国における原子力の位置づけ」では、2022年の脱原発を目指すドイツについて「原発に大きく依存するフランスからも電力を輸入」とある。  これだけ読むと「ドイツは『脱原発』というけれども、結局は原発大国フランスに依存しているのか」と思ってしまう。  欧州は国境を越えて電力網で結ばれ、隣国どうしで電力を融通し合っている。近年、ドイツは電力の輸出が輸入を上回る状態が続いているのだ。「欧州送電系統運用者ネットワーク」(ENTSO‐E)の統計では、2011年は輸入が約50テラワットだったのに対して輸出は約56テラワットだった。  また、自然エネルギー財団のサイトに掲載されている「原発を停止してもドイツはフランスへの電力純輸出国」(※2)というレポートでは、ドイツからフランスへの電力輸出量は12年以降、3年連続で輸入を上回っている、と指摘。 「フランスは電気暖房の過程が多く、冬はドイツから電気を買っている」(※3)という記事もある。ここでも政府資料と実態との間には、大きなかい離がありそうだ。  3・11後、原発稼働ゼロとなって火力発電への依存が増えたことは確かだ。温暖化対策が迫られている。  しかし日本は電力に占める太陽光や風力など、水力を除いた自然エネルギーの比率はたった2.2%(2013年)に過ぎない。今後も原発を維持する米英仏でさえ同5~10%程度(2012年)を確保しているのと比べれば、自然エネルギー普及の立ち遅れがわかるだろう。ちなみにドイツは同21%で、韓国は同1%、中国は同3%(いずれも2012年)だ。  政府は原発維持に前向きだが、大多数の国民は脱原発を望む。一方、エネルギーの自給と地産地消、そして温暖化防止に貢献する自然エネルギーの普及は、より多くの国民的合意が得られるはずだ。今後の電源構成も、自然エネルギーの普及拡大を最優先とすべきだ。 <取材・文/斉藤円華> ※1 http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/016/pdf/016_008.pdf ※2 http://jref.or.jp/column/column_20141120.php ※3 http://www.alterna.co.jp/8295