中国への対抗。アジア圏の軍需産業はインドとシンガポールが牽引

コブラゴールド

2013年のコブラゴールドの一コマ。(Public domain photograph from defenseimagery.mil.)

 2月20日、タイで米軍とタイ軍が1982年から毎年開催している東南アジア最大級の多国間共同訓練「コブラゴールド」が終了した。  今回は、アメリカがタイの軍政に批判的だったこともあり例年より演習の規模は控えめで、2月9日から始まった演習でも人道的作業や災害時救出の演習にウエイトが割かれていた。  主な参加国はタイ、米国、日本、シンガポール、インドネシア、韓国、マレーシアで、他には人道支援などの一部参加として中国とインド、さらにはオブザーバー的な国も含めると合計24か国が参加したという。  この中で、注目したいのはインドとシンガポールである。実は、シンガポールとインドは軍事費のGDP比がアジア圏でもかなり高い地域で、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の軍需産業ランキングでも日本の三菱重工業(27位)に次ぐアジア圏のTOP2と3を擁する国(※中国は同ランキングには未掲載)なのである。  特に、シンガポールは世界銀行のデータによれば2013年のGDP内の軍事費が占める割合が3.3%と東南アジアでもTOPを行くほど軍事費に注ぎ込んでいる。もちろん、使用する兵器の多くは基本的には欧米の大手軍需産業が入り込んでいるものの、自国の防衛産業にも力を入れている。1971年には自国で生産した武器をマレーシアに輸出し、その後もナイジェリアやブラジルに輸出するに至っている。主力となっているのがSIPRIの軍需産業ランキングで49位に入るSTエンジニアリング。同社の兵器売り上げ高は20億ドル超にも上る。同社が製造するアサルトライフルSAR21は、シンガポール軍の他にバングラデシュ、ブルネイ、インドネシア、モロッコ、パプアニューギニア、ペルーなど各国の軍隊に輸出されている。  シンガポールは現在世界中の超富裕層が集まる土地になっている。その富裕層を「護衛」するのがこうした軍事力なのである。  さらにインドである。インドは軍事費の対GDPは2.4%とシンガポールよりは低いものの、SIPRIのランキングでは2013年の軍事費支出は474億ドルで9位に付けている。これは韓国の339億ドルを凌ぐ勢いである(ちなみに日本は486億ドルで8位)。これらの多くは武器輸入であり、海外からの輸入だが自国製の開発にも国防研究開発機構(DRDO)などが中心となり研究開発を行っている。軍需産業の筆頭は、インド初の国産戦闘機を開発したヒンダスタン航空で、2013年は23億ドルの売り上げを誇りSIPRIランキングでは42位に入っている。2月18日にはインド国防省が新しい軍艦の建造に80億ドルを投入することを発表するなど、モディ首相体制になってからインドの軍事大国化はさらに進むと見られている。  ただ、自国での開発に力を注ぎつつも、インドもシンガポールもいまだ兵器は輸入依存態勢は変わらない。中国の脅威に周辺諸国が軍事費を拡充していく中、欧米の軍需産業にとっても両国は格好のマーケットなのは間違いない。 <取材・文/HBO取材班>