続くアイドルブーム、マネタイズ方法もより効率的に進化

熱気あふれるステージ

熱気あふれるステージ ※写真はイメージです(撮影/西田周平)

 AKBグループやももクロ、BABYMETALなどの大成功のみならず、中小規模のアイドルもここ数年は盛り上がりを見せており、アイドルブームはもはやそれまでの熱心なファン層だけでない一般層にまで大きく裾野を広げるに至っている。  AKBが確立したといわれる「特典商法」は、すでにこうしたアイドル業界を支える基本的なビジネススキームになっている。そう、CD購入が、CDという音源そのものを買うためでなく、それに付随する握手会やサイン会、その他さまざまなイベントに参加する「権利」を買うためになされるというものだ。握手会に並ぶ行列の長さや投票の多さなどファンの情熱が可視化されることでアイドルは自身の人気を確認し、ファンは応援の情熱を示すことができる、そんな図式が出来上がっていたといえる。  握手会で何度も握手することを望む一人のファンは、CDを複数枚購入することになることなどについて、賛否両論あるこのビジネススキームだが、ここに来て集金効率がさらに「効率的」になるような試みが増えている。  まず一つ目がクラウドファンディングを用いたものだ。2013年に「SUPER☆GiRLS」擁するエイベックスのアイドルレーベルであるiDOL Streetによる「hanarichu」が、クラウドファンディングのCAMPFIREで出資者を募ったり、こちらもエイベックスの「東京女子流」が同じくCAMPFIREで映画製作の一部を獲得するためにプロジェクトを立ち上げ、どちらもパトロン241人、支援総額160万9000円(目標額100万円)、パトロン数320人、支援総額704万7000円を集めた。  ちなみに、CAMPFIREでは「アイドル」で検索すると17件のプロジェクトが進行中だ。    iDOL Streetはクラウドファンディングに積極的で、2014年にも「SUPER☆GIRLS」がMV制作に関連する資金を集めるべくクラウドファンディング「WESYM」で出資者を募り、サポーター504人、538万3000円(目標額400万円)を集めている。  また、「アイドルが生配信する」を売り物にした課金制サイトも注目を集めている。DeNAが運営する「SHOWROOM」である。
SHOWROOM

SHOWROOMはDeNAが運営。課金システムには一日の長!

 こちらは、「ニコニコ生放送」や「Ustream」的なライブキャストサイトだが、課金システムに一日の長があるDeNAが運営しているせいか、1円~1万円までさまざまなアイテムが用意され、購入者はサイン入りグッズのプレゼントやコメントがアイドルの目につきやすくなることができるなどの特典があるのが特徴。  さらにアプリまで登場した。2014年12月にリリースされたアイドル参加写真投稿アプリ「Cheerz」である。こちらは博報堂DYメディアパートナーズグループのユナイテッドの子会社、フォッグが提供・運営しており、リリースから2か月程度の間にユーザーがアイドルの投稿(写真)にCHEERした回数が累計2000万回を超え、海外展開の第一歩を視野に入れて海外の日本ポップカルチャーサイトとの業務提携を発表するなど話題になっている。
cheerz

アプリを開くとアイドルの写真がたくさん。見るだけなら無料

 このアプリに参加すると、フォッグと契約しているアイドル200人以上が投稿する自撮り写真やスナップに対しCHEER(Facebookでいうところの「いいね」みたいなもの)できるようになる。このCHEERが課金のキモ。  まず、アイドルはCHEERされた回数に応じて、提携する他媒体で露出したり、アプリ内での露出が大きくなる。そのため、ファンは頑張って推しのコを支持しようとたくさんCHEERしようとする。しかし、CHEERは使用上限があるのだ。他の課金ゲーム同様、このCHEERを回復させるのに課金が必要になってくる、というわけである。この課金分によって得られた収益の何%かはアイドルに直接入るという仕組みにもなっている。  握手会参加権付きCDの販売以外にも出てきた見事なマネタイズの方法だが、こうした「効率よい」集金方法にはファンの間から少なからず辟易した声も出ている。  元AKBの森杏奈さんが写真集を作りたいとしてクラウドファンディングで資金を募ったときに提供した一口20万円コースへの特典「デート権」については、援助交際のようだという批判が出た。  また、「SHOWROOM」でも、あるライブの出場権を賭けて、複数のアイドルがファン投票を行った際に、露骨に課金を煽るようなシステムに不満の声が聞かれたり、NMB48のメンバーが出演した同サイトの番組内で課金を煽る姿にファンから「やめてほしい」と悲痛な声が聞かれることもあった。  「CHEERZ」もまた、獲得CHEER数が多いアイドルのランキングを発表するならまだしも、ファン同士のランキングを発表するのは、いたずらに競争心を煽るのではないかという指摘もある。  あるアイドルファンは語る。 「AKB商法が批判されることが多いけど、“CDを買う”という行為は、シングルなら1枚1000円程度です。それで何枚も買う人間がいるんでしょうけど、最終的には握手なりサインの権利行使のために現場に行く必要があるわけです。その“現場に行く”というのがある種のハードルになって、それこそコアなファンくらいしか大量に購入したりしないわけです。ところが、CHEERZとかSHOWROOMは1回当りの投資上限を引きあげていると同時に、現場に行くっていう障壁もない。さらにファン同士の対抗意識を煽られたら、どうなるか自明ですよ。集金効率は飛躍的に向上するんでしょうけど、逆に言えば町のどこにでもパチンコ屋があるから日本人はギャンブル依存症になりやすいみたいなことを連想してしまうんですよね」  アイドル業界も飽和状態に陥りつつある昨今、効率的なマネタイズ方法がもっと登場してくる可能性はある。あまりに効率的な「集金システム」に、ファンがうんざりするような日が来なければいいが……。 <取材・文/HBO取材班> ※参照 「SHOWROOM」https://www.showroom-live.com/ 「CHEERZ」https://cheerz.cz/