微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

マスク越しでも表情は読み取れる

ーーZoomなどのオンライン越しのコミュニケーションにおいて表情の果たす役割は何だと考えますか? 「一対一のコミュニケーションとは違いますよね。何かを失うんです。こうしたテクノロジーでは、微表情は見にくいというか、見がたいというか、とにかく、ちょっと違うんですね。人間のコミュニケーションの進化の過程から、一対一のコミュニケーションの方が自然ですので、表情や微表情、色んな非言語情報が読みとれるわけです。  Zoomやその他のビデオコンファレンスは、役割は変わりませんが、入手できる手がかりは少なくなる。入手できたとしてもタイミングが少しずれますよね。インターネットのスピードによるし、コンピュータの性能にもよるし、色々なことに影響を受けます。レクチャーなどではオンラインでもオフラインでもあまり変わらないかも知れませんが、一対一のコミュニケーションでは普段よりゆっくり、お互い確認し合いながら、話し合っていくと適切にコミュニケーションがとれます」 ーーマスクで覆われた表情の読みとりのコツを教えて下さい。 「マスクを着けていても読みとれる表情の部分は大いにあります。  ですので、無理だと思わない。驚きの眉毛とか、恐れの眉毛とか、恐れの上まぶたとか、怒りの眉毛とか、嫌悪も観ることが出来ますよね。観れないのは口だけですよね。ですので、社会的微笑は観ることが出来ないですね。しかし、真の幸福表情は、目の周りの筋肉が収縮するので、観ることが出来ます。ですので、表情を観れないことはないのですが、慣れないといけません。  顔全体に現れる表情を理解することが出来るならば、少し練習すれば、マスク越しでも表情を読みとることは出来ると思います。また、一対一のコミュニケーションならば、顔だけじゃなく、声も聴くことが出来るし、言葉もわかるし、姿勢や体の動きもわかるし、全ての非言語行動をとれるので、コミュニケート出来ると思います」

目の動きだけで表情が表れる実例

<著者追記>  社会的微笑とは、いわゆる愛想笑いのことです。一般的には、目が笑っていない表情と呼ばれています。一方、真の幸福表情は、口角が引き上げられるだけでなく、目の周りの筋肉も収縮し、目尻にしわが寄る動きを伴い現れます。  インタビューを終えての所感としては、微表情×AIが今後、益々ホットな話題になると感じました。  筆者自身もこの分野に関わっていますが、日常・ビジネスだけでなく、犯罪捜査や安全保障にとって欠かせないテクノロジーに発展するのではないかと思います。 ※本記事中の画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。 <取材・文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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