微表情研究の世界的権威に聞いた、「表情とウソの関係性」

ウソを見抜くには、「何でもいいからあなたのことを教えて」というざっくりした質問から入る

ーー微表情を生じやすくさせる質問はありますか?  たくさんあります。私が普段教えている質問法の戦略は、ファネル(Funnel)アプローチというものです。質問するとき、「何でもよいから教えて」とオープン質問から始まります。相手が話している間、ちゃんと観察します。微表情などの非言語サインが現れた話題を深堀質問していくと、どちらかが起きます。何でもないか、凄いウソか、どちらかなのです。  例えば、空港でセキュリティーエージェントが乗客に話します。「調子はどう?」と話しかけたとき、恐れの微表情があったとする。何かおかしいですね。もう少し話を続けます。  「何かあった?」「今日、どうやって空港に来た?」などもう少し掘り出すのです。例えば、空港の駐車場で車を止めたものの、ランプを消したかどうか忘れた、家出たときにストーブ消したかどうか忘れた、とかいう人もいます。そうであれば恐れの意味が理解できますよね。しかし、そういうものがなければ、どんどんどんどん話がおかしくなるんです。 <著者追記>  微表情をウソ検知に活かすには、「オープン質問から始めて、色々な話題に触れ、微表情があれば、それをチェックし、その話題について深堀する」とのことです。微表情は「トリアージ」のような機能だとマツモト博士はおっしゃってました。

微表情以外にウソを推測する上で有効な非言語サインとは?

ーー微表情以外にどんな非言語サインがウソを推測する上で有効ですか?  全部(笑)。研究者から言えば、全部なのですが、応用者として全部は無理ですよね。しかし、研究データから優先順位をつけることが出来ます。顔の表情が一番大事です。微表情含め、特定の感情や認知の動きがわかるからです。その次は、シュラッグです。シュラッグには3つの種類があります。肩のシュラッグ、顔のシュラッグ、手のシュラッグです。  日本人を対象にした実験において、インタビュー中に生じたジェスチャーを数えてみたところ、3分間に平均200ありました。大きいジェスチャーはないので、あんまりないだろうと思われますが、ないことはない。  シュラッグに関して、比較文化的な研究はあまりありませんが、私が観察した中では、シュラッグは結構、万国共通度の高いジェスチャーではないかと思います。また、私が観ているのは、マイクロシュラッグです。私の研究から言っても、経験から言っても、表情の次にこのシュラッグが重要です。シュラッグは非常に面白いですよ。 <筆者追記>  肩のシュラッグとは肩をすくめる動き、顔のシュラッグとはホウレイ線を釣り鐘型にさせ口をへの字にする動き、手のシュラッグとは両手の手のひらを上にして少し引き上げる動きのことです。アメリカ人が「I’m not sure」「I don’t know」と言いながらこのジェスチャーをしているのを目にしたことがあるかも知れません。また、マイクロシュラッグとは、マイクロエクスプレッション=微表情のように、僅かに動くシュラッグにことです。  警察官:あなたが述べていることは確かですか?  容疑者:(マイクロシュラッグをしながら)確かです。  こんなふうにシュラッグが起きたら、要注意ということになります。  次回は、AI表情分析の妥当性、マスク越しの表情読みとりのコツ、オンラインにおける表情の役割についてマツモト博士のお話をレポートします。  ※本記事中の画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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