『
視覚障害者雇用マニュアル 事務的職業とコンピュータプログラマー雇用のすすめ』という文書がある。
この文書によるとアメリカでは1965年の段階で、シンシナティ大学のスターリング博士が、視覚障害者のプログラマーなどへの就業の可能性を提唱している。日本でも、ライトハウスが1972年に、また、1980年には職リハセンターが視覚障害者のプログラマーの職業訓練を開始している(
国立職業リハビリテーションセンター)。
実際に全盲でプログラマーとして活躍されている方もメディアに登場しており、近年ではセキュリティ企業であるラックの外谷渉氏が有名だ(
@IT、
セキュリティ対策のラック)。
外谷渉氏は、子供時代から自身でプログラムを書いていた方なので、職業支援の情報と並べて挙げる方ではないだろう。しかし、視覚に障害がありプログラムを書いて活躍されている例として挙げることにした。
職業支援だけでなくプログラミング教育においても、視覚障害者向けの試みはなされている(
視覚障害者もプログラミングで科学へジャンプ)。企業でも視覚障害者へのプログラミング学習支援はおこなわれており、Microsoft は、Code Jumper というフィジカルベースのプログラミング言語を開発している。Code Jumper は、装置をコードで繋いでいくことで、プログラミングができるというものだ(
CNET Japan、
Code Jumper)。
人間は様々な理由で、病気や怪我に見舞われる。そうしたことに遭遇しなくても加齢によって身体機能が減退する。
毎日パソコンの画面をにらんでいる筆者は、年を経るごとに画面の文字を徐々に大きくしている。老眼により、小さい文字をずっと見ていると目が痛くなってくるからだ。いつか音声入力や読み上げの方が楽なタイミングが来るかもしれない。
多様な選択肢と技術的支援があることは、より多くの人が社会に自由に参加するために望ましい。
昔、小説の読み上げ確認をするプログラムを書いて公開したら、視覚障害があるという方からメールが届いた。また、Webのニュースを自動で連続して読み上げるソフトを作って公開した時も、同じようにメールが届いた。そうした経験を経て分かったことがある。誰かの便利は、別の誰かの便利に繋がる。
情報技術は、様々なハードルを下げて、新しい世界を開いてくれる。音声認識や音声読み上げは、プログラミングのための確かなツールの一つだと私は考えている。
<文/柳井政和>