さて、横浜市立図書館電子書籍サービスだが、これは横浜市オリジナルのものではない。URLを見ると、「
www.d-library.jp/yokohama」となっている。「d-library.jp」を運営しているのは、
株式会社図書館流通センター(TRC)だ。図書館向けに書籍の販売や、図書館管理業務の受託などをおこなっている企業である。同社は自治体向けに、図書館電子書籍サービスも展開している(
図書館流通センター)。
このサービスのドメイン「d-library.jp」についても確認しておく。
whoisサービスで検索してみると、
日本ユニシス株式会社が管理しているのが分かる。同社の主要株主は、現在、大日本印刷株式会社である(
日本ユニシス)。
次に、電子書籍サービスのビューワーについても調べてみる。本を Google Chrome で開いた状態で開発者ツールを確認する。HTMLを読んでみると、Copyright として「Voyager Japan, Inc.」の名前がある。また、「Powered by BinB」の文字もある。
「Voyager Japan, Inc.」は、電子書籍のビューワーで有名な
株式会社ボイジャーだ。
BinB は、多くの会社に採用実績がある電子書籍リーダーである。採用事例の中には、図書館流通センター以外にも、BookLive や コミックシーモア、講談社コミックプラス、集英社の S-MANGA などが掲載されている。
Webブラウザーで本をサクサクと読めたのも頷ける。すでに多くの実績があり、改良が続けられたビューワーだからだ。図書館のサービスだが、電子書店と同じように読むことが可能になっている。
株式会社図書館流通センターの
導入事例のページを見てみよう。前述のとおり、同社はこのシステムを多くの自治体に提供している。記事執筆時点で、172自治体で利用されている。このページには、各自治体の導入時期が掲載されているので集計してみよう。
2011年 3件
2012年 4件
2013年 9件
2014年 8件
2015年 5件
2016年 17件
2017年 8件
2018年 14件
2019年 4件
2020年 47件
2021年 53件
コロナ禍が始まった2020年から急激に数が伸びているのが分かる。今年はまだ3ヶ月しか経っていないが、53件と激増している。おそらく2020年に意思決定がされ、今年になり続々と開始しているのだろう。
外出や接触が難しくなる中で、在宅で受けられるサービスが急激に整備されている。それは図書館の世界にも波及している。これから数年で、図書館を含めた公共サービスは大きく変わっていくのだろう。
<文/柳井政和>