日本が高度経済成長に浮かれていた1974年、
東アジア反日武装戦線の“狼”、“さそり”、“大地の牙”のメンバーたちは、旧財閥系企業や大手ゼネコンを標的として、連続企業爆破事件を起こす。8人が死亡、376人が負傷した三菱重工業本社ビルの爆破を皮切りに、三井物産本社ビル、大成建設本社ビルなどに次々と爆弾を仕掛けていった。
翌年にはメンバーが一斉に逮捕され、グループの中心にいた大道寺将司は1987年に死刑が確定。2017年に獄中で死亡した。齋藤和は逮捕直後に青酸カリで自殺。大道寺あや子は、収監中に日本赤軍に奪還され、現在も国際指名手配中だ。それ以外にも、未だ収監中の者や全国に指名手配されている者がいる。
彼らはなぜこのような事件を起こしたのか。事件後、獄中で何を思うのか。韓国人の
キム・ミレ監督が、彼らの思想や後半生に迫ったドキュメンタリー
『狼をさがして』が3月27日に公開された。今回は、映画を撮り始めたきっかけなどについて、監督に話を伺った。
キム監督は、この映画を撮り始めたきっかけについてこう語る。
「父が日雇い労働者だったことがきっかけで、“土方(ノガタ)“について調べていました。すると、植民地時代まで歴史を遡ることになり、日本の釜ヶ崎まで行ってもっと詳しく調べてみようと思ったんです。
キム・ミレ監督
釜ヶ崎で取材していたところ、在日朝鮮人に出会い、彼らの生き方に共感しました。当時、建設業における日雇い労働者たちの労働運動について調べていたのですが、その中で『東アジア反日武装戦線』に出会いました。2006年には支援者たちと集まりを持つこともしました。しかし、当時の私には力量が足りないと思い、東アジア反日武装戦線を題材にすることは一度断念しています。
しかし2014年に
セウォル号沈没事故が起きて、韓国社会はとてつもない衝撃を受けました。私はこの事件の報道に接して、『果たして誰の責任なのだろうか』と考えたり、国家が持っている権力や暴力性について考えたりしました。その後、日本の日雇い労働者を描いた『
ノガタ』(2005)の続編にするつもりで撮影を始めたんです」