安倍ー菅と継承された腐敗政権。広島の「不正選挙」を許すな<弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎>

菅義偉首相

時事通信社

官僚のモラル崩壊

―― 菅政権の不祥事が止まりません。週刊文春の報道により、放送事業会社「東北新社」に勤務する菅首相の長男・菅正剛氏たちから複数の総務官僚幹部が接待を受けていたことが明らかになりました。郷原さんはコンプライアンス問題の専門家で、かつて総務省の「顧問・コンプライアンス室長」を務めていましたが、この不祥事の原因はどこにあると見ていますか。 郷原信郎氏(以下、郷原) 官僚のモラルが崩壊してしまったことが大きいと思います。中央省庁の中核を担うはずの総務省幹部たちが利害関係者から度重なる高額接待を受け、贈答品やタクシーチケットまで受領していた。ここには官僚としてのモラルは微塵も感じられません。多くの国民が呆れ返っていると思います。  しかも、彼らは自らの責任を認めようとせず、虚偽答弁まで行っていました。菅正剛氏との会食を報じられた情報流通行政局長の秋本芳徳氏は、2月17日の衆議院予算委員会で、会食の際に同局が所管する放送業界の話題が出たかどうか質問され、「記憶にない」と答弁しました。これを受けて、文春が会食時のやりとりとされる音声データを公開し、所管業務が話題になっていたことを突きつけましたが、秋本氏はその音声が「自分の声だ」と認めながらも、放送業界に絡む話題については「記憶にない」と繰り返しました。  文春の記事を見る限り、放送業界の話は秋本氏と菅正剛氏たちの会食のメインテーマだったはずです。その会合から2か月ほどしか経っていないのに、記憶がなくなるはずがありません。「記憶にない」は明らかに虚偽答弁です。  ここまで官僚のモラルが低下してしまった原因は、8年近く続いた安倍前政権にあります。安倍氏は「桜を見る会」前夜祭をめぐる問題で虚偽答弁を続け、検察の捜査によってその虚偽が明らかになったあとも、国会で説明にもならない説明を繰り返すだけでした。彼はいまだに合理的な説明をしていません。  行政の長たる総理大臣がこういう姿勢では、配下の官僚たちに「自分にとって都合の悪いことでもしっかり答弁しろ」と求めても、本当のことを言うはずがありません。その結果、官僚のモラルは完全に崩壊してしまったのです。  現在の菅政権は安倍政権の継承を掲げて成立しました。そのため、総理大臣や官僚たちの姿勢も、安倍政権からそのまま引き継がれています。安倍政権が長期化したことによって、日本政府全体が虚偽答弁に汚染されてしまったということです。

なぜ旧郵政省出身者ばかりだったのか

―― 接待を受けていた総務省幹部たちは、旧郵政省出身者ばかりでした。なぜ旧郵政省に不祥事が集中したのでしょうか。 郷原 それには郵政省の歴史的背景が関係しています。郵政省は2001年の省庁再編によって自治省・総務庁と統合され、総務省になりましたが、もとをたどれば郵政事業を取り扱う官庁で、平たく言えば郵便屋さんです。郵政省の本庁舎は当初、他の省庁が集まる霞が関ではなく、現在の港区麻布台にありました。そのため、中央省庁の中でも格下と見られ、「三流官庁」「四流官庁」と揶揄されていました。  しかし、のちに総理大臣までのぼりつめた田中角栄氏が郵政大臣に就任したことで、状況が大きく変化します。田中氏の政治力を背景に、郵政省は地位を向上させていったのです。  つまり、郵政省には政治にすり寄り、政治権力に依存する体質があるということです。  彼らの姿勢は総務省に統合されたあとも変わりませんでした。私はかつて「日本郵政ガバナンス検証委員会」の委員長を務め、西川善文日本郵政社長時代に起きた「かんぽの宿」問題などの解明にあたったことがあります。一連の不祥事の原因は、政治情勢が激変する中で、日本郵政が郵政民営化を後戻りさせないという政治的意図から拙速に業務執行に取り組んだことにありました。彼らはそれほど政治の意向を忖度していたのです。  これは日本郵政だけでなく、それを監督している旧郵政省系の部局にも言えることです。私は総務省の顧問・コンプライアンス室長を務めていたころ、今回処分された情報流通行政局長の秋本芳徳氏や内閣広報官の山田真貴子氏をはじめ、旧郵政官僚たちの振る舞いを目にする機会がありましたが、彼らは総じて権力に従順でした。民主党政権時代でもそうだったわけですから、安倍一強時代になって彼らがどれほど権力にすり寄ったか、容易に想像できます。  また、今回の接待問題の背景として、旧郵政官僚の権限と能力のアンバランスさという点も見落とせません。デジタル化・IT化の流れの中で旧郵政省の担当分野は急速に拡大し、社会的重要性も高まっていきました。しかし、「三流官庁」「四流官庁」と揶揄された旧郵政官僚たちには、それに見合った能力が欠如していました。それを補うため、彼らはより一層政治権力にすり寄るようになり、ついには総理の息子である菅正剛氏との癒着にまで発展したということでしょう。
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贈収賄罪も十分成り立つ可能性
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月刊日本2021年3月号

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