安倍ー菅と継承された腐敗政権。広島の「不正選挙」を許すな<弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎>

広島県民をなめるな

―― 安倍政権に続き菅政権でも不祥事が頻発し、政治の信頼は地に堕ちています。どうすればこうした状況を変えることができますか。 郷原 とにかく菅政権を倒すしかありません。この政権は完全に腐りきっており、自浄作用が全く働いていません。だから常識では考えられないようなことが次々に起こるのです。  特に私が腹立たしいのは、参議院広島選挙区の再選挙です。自民党は経産省課長補佐だった西田秀範氏を公認候補として擁立し、選対本部を発足させました。自民党県連が開いた会合には、国会議員や首長、地方議員など70人が集まったと報じられています。マスコミ関係者によると、ここには河井克行・案里夫妻から多額の現金を受けとった地方政治家が多数参加し、再選挙に向けてのろしを上げていたそうです。  しかし、彼らは本来、選挙に関わる資格のない人たちです。彼らの多くは河井夫妻から現金を授受し、しかもそれが買収の金であったことを認めています。選挙買収事件では通常、買収者と被買収者が同時に刑事処分されます。現金を配った案里氏が公選法違反によって有罪になったのだから、現金を受けとった彼らも本当ならば刑事処分されなければならないのです。  公選法違反で起訴され、少なくとも罰金刑を受ければ、公民権が停止されます。公民権停止になれば、一定期間選挙権を失い、選挙運動に関われません。しかし、検察が本来行うべき被買収者の刑事処分に手をつけていないので、それを良いことに、彼らは堂々と選挙に関わっているわけです。  この選挙はもともと、案里氏の有罪が確定したことに伴って行われる「やり直しの選挙」だったはずです。その選挙に、案里氏の選挙で選挙違反を犯した人たちが関わるなど、いったい何を考えているのか。これではとても公正な選挙とは言えません。それこそ「不正選挙」です。選挙運動を行う資格のない者が選挙に関わっていること自体が「不正」ですし、そのような者が関われば、また「不正」が繰り返されるのは必至です。  これほど広島県民をなめた話があるでしょうか。いや、広島県民だけでなく、国民を馬鹿にしているとしか言いようがない。こんなやり方を許してよいのかと、私は怒りが抑えられません。  こうした状況を変えるには、政権交代を実現する以外に方法はありません。それが難しいなら、石破茂氏のように安倍政権に批判だった自民党議員が自民党を割るしかない。それによって政治を一度リセットするしかない。私はそう考えています。 <聞き手・構成/中村友哉 記事初出/月刊日本2021年4月号より>
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月刊日本2021年3月号

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