テレビに出るのが知事の仕事じゃない。コロナ対策でもっと評価されるべき7人の知事

仕事をしている知事に学ぶべし

 しっかり仕事をして、感染の広がりを抑えることに成功している自治体の知事たちには、いくつかの共通点があります。  まずは、積極的にPCR検査を実施し、「早期発見・早期隔離」を大切にしていること。「疑わしきはPCR検査」が常識になっています。無症状者や軽症者でも入院させたり、あるいは専用の隔離施設を確保したり、なるべく無症状者や軽症者にも手厚いサポートが行き渡る体制を整えようと努力をしています。  次に、どこが感染源になっているのかを理解し、人の流れを把握し、エピセンターを止める努力をしていること。感染源になっている所には移動しないように呼び掛けをしています。秋田県のように「東京に行くな」の一言で感染を防止できているような自治体もあります。感染の流れを追えているので、「会食の時間は2時間まで」とか「マスク会食をすればいい」などという、科学的根拠ゼロに等しい話や奇天烈な作戦を語る人はいません。  最後に、限られた予算の中で可能な限り、いろんな補償を出そうと努力をしていることもあります。どこも苦しく、多くの都道府県には潤沢に予算がありませんので、十分な補償ということにはなっていないかもしれないのですが、それでも何かしらの補償を出そうと努力をしています。  今回、本記事執筆にあたり、各知事の仕事ぶりを上記の項目などを調べて独自の基準でAランクからFランクまでで評価をしてみた時に、Aランクをつけられたのは今回紹介した7名、Bランクが6名(秋田、山形、埼玉、山梨、大分、長崎)、Cランクが7名、Dランクが9名、Eランクが14名、Fランクが4名でした。かなり甘めに評価をしたつもりですが、半分より上の知事が20人、半分より下の知事が27人。新型コロナウイルス対策に関しては、あんまり仕事をしていない知事が大半です。それでも仕事をしている知事はいるのですから、そういう知事のやり方を少しでも参考にしていけば、もっともっと新型コロナウイルス対策を強化でき、感染者を減らし、死者を減らすことができると思います。

このタイミングで緊急事態宣言を解除すること

 よりによって、3月21日という年度末の最も警戒しなければならないタイミングで「緊急事態宣言」を解除したことは、愚策中の愚策であると断言したいと思います。  なぜ第3波が非常に大きな山になってしまったのか。それはクリスマスや忘年会などで、みんながひっそり飲みに行ったり、遊びに行ったりしてしまったからに他なりません。実際、全国各地で市長や知事、議員たちがこぞって「おつかれ会」を開催して問題になり、市民から監視されているはずの議員ですら、こっそり飲食しているということは、民間の人たちはもっと飲食をしています。その結果が、1日に8000人近い新規感染者が出るという地獄を作り出しました。年明けの地獄っぷりと言ったら、それはそれは凄まじいもので、どこも病院がパンク寸前。ほぼ医療崩壊状態に陥っていると言っても過言ではありませんでした。本来は入院して管理されるべき患者たちが病院に入れてもらえないようなことまで起こっていたのです。  あの時は、年末年始に緊急事態宣言が発令されていたにもかかわらず、あれだけの地獄が広がったのです。最近は総務省の官僚を中心に、永田町や霞が関界隈の人たちの記憶が次々になくなるという不可解な現象が起こっていますが、こちらはつい3ヶ月前の話です。今度は暖かくなるとはいえ、みんながお花見に出かけ、会社の決算も多い年度末、卒業シーズン、歓送迎会シーズンに緊急事態宣言を解除し、口では「気を付けてくださいね」と言いながら、政府が自由に出歩くことを「OK」と言っているに等しいわけですから、これから地獄が広がらないと考えている方がおかしいのです。  ましてや、今、日本に広がりつつあるのは、感染力の高い変異株です。感染力が高いので、いくら青空の下、桜の木の下とはいえ、マスクなしで飲食をすれば感染してしまうリスクは上がります。民間のPCR検査センターが増えて、都会なら2500円ほどの価格帯でPCR検査が受けられるようになってきたとはいえ、PCR検査をしてから飲みに行く人なんて、ほとんどいません。けっして検査体制が十分とは言えない中で、なぜその先の未来を見通すことができないのでしょうか。  菅義偉総理大臣をAランクからFランクで評価するなら、それは紛れもなく「Fランク」ということになってしまうのではないでしょうか。仕事のできる知事に変わってもらった方がマシなレベルです。

選挙ウォッチャーの分析&考察

 みんながワクチンを打てば、集団抗体ができて、感染者は激減すると考えている人もいるかもしれませんが、既にワクチンが効きにくい変異株が広がりつつある上に、ワクチンを打っても抗体を得るまでには約2ヶ月ほどかかります。仮に、今すぐ国民全員がワクチンを打ったとしても、ゴールデンウィーク明けまでは集団抗体は得られないし、5月に打てば7月、6月に打てば8月まで抗体が得られないので、それまでは我慢するしかありません。  国民に十分なワクチンが行き渡る戦略すら示せていない中で、最も感染が広がりかねないタイミングで「緊急事態宣言」を解除する。5月に解散総選挙をするために作られたシナリオなのかもしれませんが、こんなことでは解散総選挙もできないまま、日本に地獄を広げることになりかねません。もう少し仕事をしている知事を見習ってもらいたいものです。 <取材・文/選挙ウォッチャーちだい>
選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材しています。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中
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