似非「伝統」や穴だらけの「少子化」論。選択的夫婦別姓をめぐる日本の議論について外国人に聞いてみた

選択的夫婦別姓は少子化に影響するのか

 <少子化>  選択的夫婦別姓をめぐっては、婚姻率が低下し、離婚率や婚外子の割合が増加するという声もある。つまり、「姓が少子化に影響している」「シングルマザーが増える」という意見だ。  「まるで関係ないと思います。もちろん、少子化と選択的夫婦別姓導入の時期が重なるというようなデータもありますが、因果関係が不透明すぎます。それよりも、働く女性・自立した女性が増えたことが関係していると思います。  私たちの選択肢が増えたことで、結婚や出産をしないという道を『選べるようになった』んです。それまでは、私たち女性にとって、閉ざされていた道です。『子どもを産まなくなるから、苗字を夫に合わせろ』というのは無茶苦茶ですし、人権侵害です」(女性・イギリス人)  「女性活躍」を謳いながらロクなサポートもせず、同じ口で少子化の責任まで問うとなれば、不公平に感じるのは当たり前だ。こうした矛盾は、選択的別姓に反対する丸川珠代氏を、男女共同参画大臣に据える姿勢にも表れている。  また、身も蓋もない話だが、もし仮に姓の変更が少子化に影響を与えるならば、男性の姓に変える女性が圧倒的であるにも関わらず、まるで少子化に歯止めがかかっていない現状は、いったいどう説明すればいいのだろうか。

「ロジックが破綻している」との声も

 また、前述した国連からの勧告など、世界的に見れば「人権侵害」であるという視点も、日本ではまだまだ薄いように感じる。  「本当に少子化に取り組みたいなら、苗字のせいにしないで、社会保障や育児のサポートをするべきです。そもそも、結婚しようがしまいが、子どもを産もうが産むまいが、私たちの勝手です。それは男性も同じです。  国民の権利を守るべき法律が、男女どちらかから苗字を奪うというのは、意味不明です。苗字と少子化を結びつけるロジックも破綻しています。私はむしろ、女性が苗字を気にしなくてすむので、婚姻率や少子化にはプラスだと思いますよ」(女性・イタリア人)  伝統に続いて、少子化についても「合理性に欠ける」という声が多勢。また、海外からは「社会的問題を女性にばかり押しつけようとする」というイメージを持たれているようだ。
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進まない選択的夫婦別姓は人権感覚欠如の表れか
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