宗教だけじゃない、大学生を狙う「怪しい勧誘」。大学・高校でカルト勧誘を断る方法

「有能な学生」だけを狙う少数精鋭の新左翼セクト

 これと別に、「東大人権問題研究会」「Moving Beyond Hate(MBH)」(以上東京大学)、「ARIC」(一橋大学)、「SABEMOS」(都立大学)、「POSSE」(中央大学)といった名前で活動する政治セクトもある。しょっちゅう名称を変えるので、この春はまた違う団体名を名乗るかもしれないが、いずれも同じ1つの新左翼セクトのフロントサークル、もしくは事実上の関連団体だ。  政治団体であることを隠し、人権問題・差別問題、あるいはそれ以外も含めた社会問題全般について学ぶ勉強会サークルを装って勧誘する。秘密結社めいたセクトで、正式名称は不明だ。活動家たちはセクト内では自分たちのことすら「○(マル)」という符丁で呼ぶ。  このセクトの元活動家に話を聞くと、春の勧誘時にフロントサークルで勧誘した新入メンバーには1年近く、バックにあるセクトの存在を知らせないという。そのままサークルの勉強会で発表をさせられたり、関連のNPO法人や労働運動団体(NPO法人POSSE、その関連のユニオン等)の手伝いなどで「負荷をかけ」ながら鍛える。やがて、その負荷に耐えて従順にしっかり活動できる有望株と見なされたメンバーだけが、セクトの存在を告げられ加入を求められる。  上で、カルトも有能な人材を求めているということを書いた。このセクトは、その点で徹底しているわけだ。  共産党と比べると、勧誘方法以外についても問題と実害がある。元活動家はかなり前にセクトを離れた立場なので現状は不明だが、在籍当時は「毎月2~3万円」という、学生にとってはかなり高額なカンパを払わされていたという。「親から20万円引っ張ってこい」というセクト内での指示に従い、実際に親を騙して20万円を出させセクトに上納したと語る活動家もいる。複数のフロントサークルを掛け持ちさせられ、留年したり精神の健康を害してしまったりする活動家もいたという。  社会問題に興味を持つこと自体は、いいことだ。政治に関心を持つことも政治活動をすることも、内容によりけりとは言え、やはり悪いことではない。  しかし、そのために大学生活を犠牲にしたり、他の学生を騙して勧誘したりすることは、もともと本当に自分がやりたかったことなのか? 他人を騙さなければ、政治を学んだり政治活動をしたりできないのか? その点は常に立ち止まって考えるようにしてほしい。

「親に言わないように」は要注意

 この政治セクトでは、メンバーに対して「親に言わないように」と指導する。親の干渉によってメンバーの活動が制限されたり、セクトの情報が漏れたりするのを防ぐためだろう。セクト内では「親対(親対策)」などという用語まである。  カルト宗教でも往々にしてあることだ。特に前出の摂理はその点が露骨で、勧誘対象に対していかに自然に口止めするかという話術まで、教団内部で指導されている。  摂理は、2006年頃から全国の大学がカルト対策に乗り出すきっかけとなった宗教団体だ(前回記事参照)。勧誘されている学生が親に話せば、親が学校に相談し摂理の勧誘が学校側に捕捉されることになるのは、目に見えている。摂理では、これを「迫害」と呼び、勧誘対象への口止めを「迫害対策」と呼んでいる。  マルチ商法や投資・起業関係の勧誘でも、団体によっては同じことをしているケースがあるかもしれない。勧誘される側は、言われるがままになっていると、誰にも相談できず団体側からの情報や説明だけで物事を考えなければならなくなる。普通に学校生活を送りつつも、情報面では外界から隔絶されがちになる。  これは非常に危険な状態だ。  前回の記事で、当初の勧誘時の説明と違う実態が見えた時点で連絡を断つのが理想であることを書いた。親や友人に相談することを(たとえ優しい口調であっても)思いとどまらせようとするという点も、重要な判断基準だ。そういう団体だとわかった時点で、問答無用で関わりを断つべきだろう。
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「マルチ商法」なども年々問題が深刻化
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