王室での処遇を”暴露”したメーガン妃の表情から、専門家が読み取ったものとは

人種差別の話では、違った表情を見せる

 次に、息子アーチーに対する人種差別問題について考えます。インタビューの32分前後で一度取り上げられ、1時間15分前後にもう一度触れられます。  息子アーチ―の妊娠中に「アーチ―には警護が与えられない、称号も与えられない」と王室から伝えられたことを明かし、その後、少し間を置き、アーチ―の肌の色がどのくらい黒いかということを懸念する会話があった、と語ります。  アーチ―の肌の色について語るとき、眉が引き上げられます。これは強調を意味する会話のシグナルです。この問題を意識的に強調して伝えようとしている様子が伺えます。  「誰がそんなことを言ったのか」という司会のオプラ氏の質問に、メーガン妃は無言のまま眉間にしわを寄せ、口角を軽く引き上げ、オプラ氏を見つめます。感情のコントロール及び認知的負担が生じていると推測されます。  「何?そんな会話があったの?」とオプラ氏は、驚きと嫌悪、動揺が混合した表情で反応し、同じ質問をもう一度投げかけます。しかし、メーガン妃は名前を明言することを避けます。  先のメンタルヘルスの問題を語っているときのメーガン妃の表情・言動と比べると、息子アーチ―の人種問題について感情がそこまで大きく動いていないように見えます。  自身の関心事が大きければ大きいほど、感情は大きく動き、その表れとして表情も豊かに動きます。しかし、そういった様子はあまり観られません。また、会話の再現もなされていません。  オプラ氏はこの問題に関する質問をヘンリー王子にも問います。オプラ氏の質問にヘンリー王子は、うつむきながら軽く口角を引き上げ、羞恥の表情を見せ、引き続き、左側の口角を引き上げる罪悪感の表情を見せます。そして、答えたくないと発言します。

メーガン妃の告白をウソと断定するのは早計

 メーガン妃とヘンリー王子の話は事実でしょうか。  それとも、人種問題を、例えば、人々の同情や共感を得るために、でっちあげているだけなのでしょうか。ただ、ウソと判断するのは早計です。このインタビュー情報のみから真偽は判断できません。色々な可能性を想像することが出来ます。  例えば、人種差別の雰囲気を感じていた、人種差別的なうわさを耳にした、直接ではなく人づてに人種差別発言を聞いた、王室にいる人種差別者の名前を出すと攻撃が個人的になりすぎてしまう、といったことかも知れません。  いずれにせよ、人種差別の問題については具体的に語られていないため、現時点では想像やうわさが一人歩きし、誤解が誤解を生むかも知れません。  英国王室が「記憶は人によって異なるかもしれないが」と認識違いの可能性を考慮しているように、調査がなされ、人種差別発言が明確になされていたのか、そうであるならば、どの程度の差別が誰によって引き起こされたのか明確にされる必要があります。  伝統と格式を重んじる英国王室が人種問題についてどのような見解を抱いているのか、どのような方向を示すのか、この問題の行方をしばらく追いたいと思います。 <文/清水建二> <参考web> Oprah With Meghan And Harry: A CBS Primetime Special(2021年3月10日現在。日本からはアクセス不可) 英王室、人種差別の非難「深刻に受け止める」 メガン妃の発言受け
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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