思わぬ形で
自分たちが搾取されていることを知ってしまった学生たち。現地の現役学生たちに話を聞くと、やはりその声には怒りがこもっていた。
「今回の事件は
控えめに言っても不祥事ですし、
倫理的ではありません。僕の意見としては、大勢の学生を試験に合格させるべきです。それだけ
普段の授業で知識を得たということの裏返しですから。
わざと学生を不合格にすることはナンセンスですし、
本来の目的から逸れていると思います」(男性・19歳)
ただ、なかにはリモート授業を強いられる
教員の気持ちがわかるという声もあった。
「学生としては
複雑な気持ちです。
部分的には教員の言い分も正しいと思います。1回目の期末試験の結果は高かった、
高すぎるぐらいでした。リモート授業になってからは
グループでの回答や、
さまざまな勉強ツールが利用されるようになりました。この状態が一年以上続いていて、
学生の理想や意欲は劇的に低下しています。教員から見ても私たちの(学業への)関与が減っていますし、『
カンニング』を防ぐために及第の仕方も変わっています」(女性・19歳)
学生のなかには、
ビデオを切ってバイト中に授業へ「出席」している者もいるという。また、ウェブ上での提出物が増えたことで、
コピペなどの「カンニング」が増えているのも事実だ。
「ただ、それでも学生の採点の仕組みには大きな問題があります。今回の事件は、
学生が真面目に、平等に扱われていないことを示しています。これによって、ますます
リモート授業に意味があるのか、懐疑心が増したと思います」
単なるビデオの切り忘れから、
教育ビジネスの闇、そして
コロナショック下での教育のあり方にまで議論が飛び火した今回の事件。リモート普及によるトラブルや、学業よりも集金が目的となってしまった教育現場の問題は、我々日本人にとっても無関係ではない。
以前、話題となった
医学部の女性差別問題など、我々がニュースで目にする話題は氷山の一角であると言えよう。教育問題がリモート会議を通じて明るみに出るというのはコロナ時代ならではかもしれないが、その根底には長きにわたって
閉鎖的・不透明な部分の多い、教育界のあり方に原因があるのかもしれない。
このように、今回のケースから我々が学ぶことはたくさんありそうだが、兎にも角にも、
まずはリモート会議のビデオをお切り忘れないよう、くれぐれも気をつけていただきたい。
<取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン