首相官邸HPより
6府県を対象として緊急事態宣言の先行解除が決められた2月26日の夕方に、
菅義偉首相は官邸で記者団の
「ぶら下がり」取材に応じた。この日は正式な記者会見をおこなうことが予定されていたが前日に急遽、見送りとなったことから、記者会見で司会進行を担当してきた山田真貴子内閣広報官が菅首相の長男らによる高額の接待を受けていた問題との関連が取りざたされた。
従来は数分で終わってきた菅首相に対する「ぶら下がり」だが、今回は記者側から矢継ぎ早に質問が投げかけられた。正式な記者会見の場合には、指名する記者を山田広報官が選び、質問も一人一問に制限していたため、かみ合わない答弁しかない場合でも更問い(重ね聞き)が困難であったが、今回の「ぶら下がり」では更問いも活発におこなわれ、菅首相も答弁書の棒読みではなく自分の言葉で答えており、正式な記者会見以上にリアルなやりとりが実現することとなった。全体で18分ほどの中で、冒頭の記者団による問いかけ以外の問いかけは、毎日新聞の一問一答詳報によれば、延べ27回に及んだ。
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菅首相いら立ち「同じような質問ばっかり」 一問一答詳報(毎日新聞、2021年2月26日)
首相官邸ホームページでは、以下の通り、その時の映像が確認できる。
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緊急事態宣言の一部解除等についての会見(首相官邸ホームページ、2021年2月26日)
ただし、この映像では、冒頭の記者団からの問いかけがカットされている。また、同ページにも書き起こしがあるが、記者の質問が「〇〇について」とまとめられており、「やりとり」として確認することができない。さらに、菅首相が質問を打ち切ろうとした場面なども書き起こしでは省略されているため、上記の毎日新聞の一問一答詳報の方が、再現性が高い。
質問が重ねられる中で、菅首相がいら立っていく様子は、下記の
Choose Life Projectによる2分16秒の編集映像からもうかがうことができる。
さて、今回取り上げたいのは、
「~じゃないでしょうか」という、菅首相が多用する言い回しである。いったいこれは、何を意味するのだろうか。上記の毎日新聞の詳報から今回の「ぶら下がり」における「~じゃないでしょうか」という言い回しを確認したところ、13回もあった。一度耳に残ると、そのあとずっと気になる言い回しだ。他に、「~じゃないですか」が2回ある。
「~じゃないでしょうか」というぼかしたような表現を首相が記者会見で多用するというのは、不自然に思える。なぜ自分が責任をもって、はっきりと言い切らないのだろうか、と。なぜ首相なのに、相手にお伺いを立てるような言い方をするのだろう、と。
以下では今回の「ぶら下がり」における「~じゃないでしょうか」という言い回しが用いられた文脈をたどりながら、私なりの見立てを提示してみたい。
結論を先に言えば、これは、
いら立ちを抑えながら反論する場合に用いられる言い回しではないだろうか。「
~じゃないですか!」と言いたい気持ちは抑えなければいけない、しかし反論はしたい、そういう場合に口をついて出てくるのが「~じゃないでしょうか」という言い回しではないか、と思うのだ。