上司と部下の分断がさらに加速する言葉。指示出しで「なるはや」がNGなワケ

「急いで」「早く」の基準を明確に

 ギャップを解消する2つ目は、上司は緊急度を大にしたが、部下は緊急度を小にしたというように、単なる実施期限のずれではなく、「緊急度の認識のギャップを解消する方法」だ。  この場合は、緊急度を決めるための根拠が異なっているケースが多い。  演習を実施すると、いろいろな根拠が挙がる。社外の顧客からの依頼か、社内の他部署からの依頼か、チーム目標の達成に寄与するかどうか、個人目標の達成に寄与するかどうか、多くの人に関与する業務か、自分だけで完結する業務かなどだ。  その根拠を上司と部下ですり合わせると、緊急度の認識のギャップが小さくなっていく。肝心なことは、上司の認識を部下に押しつけないことだ。業務を実施するのは部下だ。だとすれば、部下の意欲が上がるように、部下がやりやすいように実施させればよいからだ。  従って、上司が許容できる範囲であれば、ある程度は認識のギャップを放置して、部下に合わせることを実施してみるとよい。そのほうが部下のパフォーマンスが上がりやすい。  業務の「実施期限のギャップ」「緊急度の認識のギャップ」のほかにも、上司と部下の間には「意欲を高める要素のギャップ」「重要度の認識のギャップ」「貢献度の認識のギャップ」「説明の仕方のギャップ」「返答の仕方のギャップ」など、さまざまなギャップがある。  これらのギャップをひとつずつ解消していくことが、チームのパフォーマンスを向上させる、確実で即効性のある打ち手なのだ。

「緊急度」を上司や依頼者と共有しよう

 質問:緊急度の尺度も人によって異なるのか  「至急やってください」というように依頼されることはよくあります。緊急度についても、上司と部下、依頼する人と依頼される人との間で、認識が異なる場合が多いのではないでしょうか?  回答:具体的な期日で緊急度を峻別する  たとえば、来週から1か月間の業務の緊急度の優先順位をつける場合、単純に来週からの第1週に実施しなければならない業務は緊急度が大、第2週に実施すればよい業務は緊急度が中、第4週まで実施すればよい業務は緊急度が小というように峻別していくと、緊急度の優先順位の確度が上がります。  来週1週間の業務の緊急度の優先順位であれば、たとえば火曜日までに実施する業務は緊急度が大、木曜日までに実施する業務は緊急度が中、週末までに実施する業務は緊急度が小ということになります。 これを上司や依頼者と共有することで、緊急度という概念が具体的になります<緊急度:基準(来週から1か月間の業務の場合)>  大:来週からの第1週に実施しなければならない業務  中:第2週に実施すればよい業務  小:第4週まで実施すればよい業務 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第230回】 <取材・文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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