この国の政府に文化芸術を支援する気はなし!? WeNeedCultureによる公開質問4問に対する文化庁のゼロ回答

文化庁からの回答は如何なるものだったのか?

 以下、文化庁からの書面回答の全文を掲載する。 bunkaanswer文化庁回答:本質問状については、内閣総理大臣、財務大臣、経済産業大臣、文部科学大臣及び文化庁長官宛に頂いていますが、関係省庁にも確認した上で、文化庁より以下のとおりまとめて回答いたします。  文化芸術分野への支援については、これまでも文化庁の令和2年度第2次補正予算事業(560億円)等において、ライブハウスやミニシアター等も含めた文化芸術団体に対し、その活動継続や技能向上に向けた積極的な取り組みや、収益力を強化するための取組等への支援を行ってまいりました。黄信号)  また、文化芸術団体の事業を継続し雇用を維持するため、実質無利子・無担保融資や雇用調整助成金の特例措置を実施してまいりました。赤信号)  今後も、令和2年度第3次補正予算において、コンテンツ関連事業者が収益基盤の強化に資する取組等を実施する公演への支援(456億円)や、文化芸術関係団体が感染対策を十分に実施したうえで行う積極的な公演等への支援(370億円)等を行うこととしております。黄信号)  さらに、緊急事態宣言に伴って延期・中止したイベント等のキャンセル費用について支援を行えるよう検討を進めるとともに、緊急事態宣言の発令時に遡って支援対象とするなど、可能な限り事業者の使い勝手の良い制度として行きたいと考えております。赤信号)  これらを切れ目なく実施することにより、新型コロナの感染拡大により厳しい状況にある文化芸術やエンターテイメント業界の活動を支えてまいります。青信号)  文化芸術関係者におかれましては、これまで徹底した感染症対策にご尽力いただきながら、イベント等の開催に取り組んでいらっしゃることに心から敬意を表します。今後も、関係者の現場の声を十分に聞きつつ、文化芸術活動に則して、文化芸術活動の再開・継続・発展を支えるために、関係省庁とも連携し、しっかりと対応してまいります。青信号)』

「何がなんでも補償をしない」とでも言いたげな内容

 前置きの1段落目は省いて、2〜7段落目の中身を確認していく。まず、2段落目と4段落目は周知の事実を述べているだけであり、黄信号とした。周知の支援内容を長々とアピールする姿勢は閣僚の国会答弁とそっくりだ。 2段落目:第2次補正予算の支援内容 4段落目:第3次補正予算の支援内容  また、3段落目と5段落目は以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。 3段落目 【質問1】 給付型支援を行えない理由 ↓ すり替え 【回答】融資や雇用調整助成金の支援 5段落目 【質問2】自粛に対する協力金が出ない理由 ↓ すり替え 【回答】イベントのキャンセル費用の支援  3段落目については、2回目の緊急事態宣言によって新しい公演などの活動を始める精神的・金銭的余裕は既に尽きているからこそ、現在の困窮を乗り切るために給付型支援の必要性を訴えているのに、融資や雇用調整助成金の話を持ち出しており、絶対に補償はしないという強い意思が感じ取れる。  5段落目については、文化芸術は最も早い昨年2月から自粛に協力してきたにもかかわらず、協力金の対象外である不条理を訴えているのだが、回答ではイベントのキャンセル費用にしか言及していない。だが、当然ながら団体であれば事務所や稽古場の家賃、スタッフの給料などの固定費があるので、イベントのキャンセル費用の支援だけでは自粛に伴う損失を埋め合わせることはできない。  最後の6〜7段落目は、それぞれ質問3(この国の文化芸術を守るために政府ができること)と質問4(文化芸術関係者へのメッセージ)に対応する内容となっているため、青信号としたが、その中身はゼロ回答である。  6段落目で「これら(の支援)を切れ目なく実施する」とあるが、実態としては支援の対象から漏れているフリーランス等の個人や中小団体が数多くあり、認識がそもそも誤っているのではないかと不安になる。7段落目では、文化芸術関係者の感染症対策への敬意を表すると言う一方、それでは政府や文化庁は具体的に何をするのかというと「関係省庁とも連携し、しっかりと対応」としか言っておらず、実質的には「現場の自助努力に任せる」と丸投げしたに等しい。  この回答を総括すると、これまでの国会答弁と同様、「なにがなんでも補償はしない。自助努力で凌げ。」という意思しか感じとれない。そもそも、この1年間の政府の文化芸術への支援内容が現場のニーズとことごとく乖離していたという事実すら未だに認めようとしていない。残念ながら現政権が続く限り、この姿勢が変わることは無いと考えられる。 *政府の文化芸術支援内容の問題点については、以下の過去記事を参照 ・「政府に文化芸術を支援する気なし? 関係者を落胆させた第3次補正予算の文化芸術活動支援」(2021年2月1日)「国会に届いた #WeNeedCulture の声。山添拓議員の質疑から浮かびあがる政府方針を検証」(2020年6月16日) <文・図版作成/犬飼淳>
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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