全世界で季節性第三波エピデミックSurgeが収束に向かっていますが、ここで日本、韓国、台湾での累計死亡数の比較をしてみます。IHME他の評価では台湾はほぼ完璧に感染者を把握しており、韓国がそれに続いていますが、本邦については、ICL(インペリアル・カレッジ・ロンドン)からは、統計で把握されている感染者数は実数の1/5程度と酷評されています。IHMEは、本邦統計は1/2程度の過小評価と指摘しています。そうであっても死者数もついては、仮に意図的であっても桁が変わる様なごまかしは利きません*ので死亡数での評価は重要です。
〈*死亡数を誤魔化すと半年から1年後には超過死亡数(率)という形で露見し、世界への恥さらしとなる。本邦の場合、超過死亡が第一波、第二波、第三波エピデミック全てで目立っており、明らかに本邦のCOVID-19死亡統計は過小評価メイキングが成されている統計偽装国家と見做される状況である。勿論、ブレジネフ末期以降のソ連邦の様にみっともない統計そのものを隠蔽する国家もあるが、末期状態の駄目国家扱いされるだけである〉
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コロナ禍による死者数が本当は分からない日本、統計の致命的瑕疵 2020/02/04関根敏隆, 肥後雅博 日経ビジネス電子版
日本、韓国、台湾における累計死亡数の推移(2020/09/01〜2021/02/20)(出典:OWID)
本邦に有利となりますが、日韓台三カ国における第三波エピデミックの起点を10/1*として2/20迄の累計死亡者数の増加を評価すると次の様になります。有効数字は2桁です
日本 5900人/1.3億人
韓国 1100人/5.2千万人
台湾 2人/2.4千万人
人口比で日本の人口1.3億人相当に補正すると、日本5900人、韓国2800人、台湾11人となります。台湾は桁違いに優秀ですが、
本邦は、せめて韓国並みに防疫に成功していれば、9月以降に死んだ5900人のうち、53%にあたる3100人が死なずに済みました。これが第三波エピデミックにおいて「世界に誇る日本流コロナ対策」の真価です。
〈*現在筆者は、本邦において季節性第三波エピデミックSurge(秋の波)が始まったのは9月中旬と評価している〉
なお、執筆時点で本邦の超過死亡数の推定値は2020年10月分までしか発表されていません。超過死亡数の評価には時間を要しますので、「秋の波」の死亡数からの最終的な評価には、あと半年ほどの時間を要します。たかが死亡統計を評価するのにこの様な苦労をするのはソ連・東欧ウォッチャーであった筆者にとっては30余年ぶりのデジャビュ*です。
〈*余談であるが、1985年頃は、本邦の統計は極めて優れたものと評価されていた。統計は国家の礎であり鏡である〉
前回、死亡数の減少が始まっており、順調に進めば医療への過負荷は解消されると締めくくりました。それから二週間経ちましたが、日韓台の死亡統計はどうなったでしょうか。
ここで日本、韓国、台湾の100万人あたり日毎新規感染者数の統計と、100万人あたり日毎死亡者数の統計を上下に並べます。
(上)日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, 7日移動平均, 線形)2020/09/01-2021/02/20/(下)日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎死亡者数の推移(ppm, 7日移動平均, 線形)2020/09/01-2021/02/20:日本は、1/19に過去の統計漏れが合算された大きな数値が入力された為に1/19〜1/25の7日間の7日移動平均が跳ね上がっている。現在厚労省のオープンデータは、過去に遡及して正しい値となっている(出典:OWID)
在来株に感染した場合のCOVID-19の推移は、よく分かっており、発症日をDay 0とすると、感染発生日は平均してDay -5です。重症化の分かれ目はDay 10であり、重症化して死亡する場合は平均してDay 18に死亡します。
発症して、検査をし、新規感染者として統計に表れるのは、国やエピデミックの状態で左右されますが、第三波エピデミックにおいて本邦は、11月下旬以降Day 9前後*に統計に表れます。従って、日毎新規感染者数の約1.5〜2%がその9日後前後に死亡することとなります。結果、日毎死亡統計は報告、集計までの時間を加えて日毎新規感染者数の10日前後あとに現れると考えられます。
〈*平均して感染発生日の14日後に新規感染者数が統計化されるため、発症日をDay 0とすると新規感染者数統計値の発表は、平均してDay 9となる〉
この視点で韓国の統計を見ると綺麗に合います。諸外国もだいたいそういった傾向です。ところが本邦では、4月の第一波と8月の第二波では、死亡統計の新規感染者数統計に対する遅行は14日前後であり、第三波の11月から12月でも14日前後の遅行となっています。これは諸外国より大きな値であって本邦COVID-19統計の謎です。
2月に入り、死亡統計の新規感染者数統計の対する遅行は更に拡大し、2/3の死亡に対応する新規感染者は、1/12頃で、22日前後遅行しています。この遅行の拡大によって本邦のCOVID-19統計観察者の多くが混乱しました。現在もこの遅行の拡大は謎であり、IHMEによる本邦感染実態評価と予測にも大きな修正が2/20更新で行われています。
この遅行の大きさは、本邦のCOVID-19重症患者に対する延命治療が世界でも飛び抜けて優れているのならば説明がつきますが、致命率(CFR)*は、優れているというわけでも劣っているわけでもなくやや良い程度の推移です。筆者は、COVID-19臨床に関する知識を持ちませんのでこのことについては、臨床医による評価を待ちます。
〈*CFR(Case Fatality Rate)は、診断付き死亡者累計数を診断付き感染者累計数で割ったもの〉
日本、韓国、台湾、合衆国、アジア全域における致命率(CFR)の推移(2020/01-24-2021/02/20(出典:IHME)
次に、最近の本邦のCOVID-19死亡統計では、新規感染者数の減少に比して死亡者数の下げ渋りがたいへんに目立ちます。そしてとうとうここ数日では下げ止まり、増加に転じてしまいました。本来、COVID-19死亡統計は一定の遅行日数を空けて、日毎新規死亡者数と同様の推移を示すのですが、この2月は、それが崩れています。
これはそれだけ多くの感染者が死んでしまうことを示し、実際に本邦のCFRは、増大し続けており、間もなく合衆国と韓国を追い抜き、2%台に入る可能性があります。勿論これは医療への負荷が大きいことを示しており、本邦だけでなく諸外国でも医療へ過負荷がかかるとCFRは増大して行きます。
COVID-19に対する医療は、5〜7月にかけて大きく発達し、CFRは常に減少して行くのが基本となっており、CFRの増大は、医療に強い過負荷のかかるエピデミックが生じていることを示します。