そんな異例の状況に追い討ちをかけたのが、
大学入学共通テスト。Fさんが担当している英語がガラッと変わってしまったのは、ご存知の方も多いだろう。
「TOEICのようにテクニックで解く形式になり、量が圧倒的に増えました。文法とアクセントがなくなって、リーディングも読み物形式というより、もっと実務的な内容に変わったんです」
リスニングとリーディングの配点が同じ比率となり、
指導の仕方も大幅な変更を余儀なくされた。
「模試などで『こんな感じか』とは思っていましたが、本当に変わりましたね。テープを流したり、実際に読んだり、
やることも増えて、正直対応しきれませんでした。私立でも英語に強い大学は共通テストのスコアが必須のところもあります。大学ごとに、リーディングとリスニングの配点を決めていいそうなので、外国語に力を入れているところは、リスニングの比率はさらに高いと思いますよ」
受験に関して言えば、今後は
私立大学の一般入試と
国立大学の二次試験に注目しているという。
「
これらの形式次第で、共通テストが持つ意味合いも変わってくるでしょうね。英検など、外部試験を一般試験の英語に換算する大学も増えています。
今年の受験生は可哀想ですよ。共通テストだけ変わっても、そのあとに行われる一般入試や、
普段の授業と効率的に結びついてないと、教師も生徒も混乱するだけです。今後どうなるかはわかりませんが」
コロナの状況と同じく、まだまだ先行きは不透明だが、いっぽうでは手応えも感じているという。
「英語が得意なコは、TOEICや英検などの勉強も頑張っています。そういうコには
個別でエッセイや面接の練習に付き合ったんですが、そういう指導を奨励したほうが、
普通の授業よりも話したり書いたりする力がつくように感じました」
怒涛のような一年が過ぎ、ようやく卒業式シーズンを迎えようというFさんだが、とても「
ポストコロナ」を考える余裕はないという。
「親御さんの仕事の都合で、
学費の面で苦労する学生も増えると思います。
支援できる制度や枠組みも、より一層必要になってくるでしょうね。
学費が払えなくて退学するコも例年より増えるんじゃないかと心配です」
懸念されている
生徒たちのメンタルについては「
例年通り、元気にやっていますよ」と語るFさんだが、コロナショック下では日々新たな試練が待ち受けている。生徒たちだけではなく教師のメンタルについても、より焦点があてられるべきだろう。
コロナで困窮しているのは誰も同じだが、東京五輪開催の是非など、「
大人の都合」にばかり目が向けられてはいないだろうか?
未来を担うべく学ぶ子どもたちと、彼らを育む教師たち。せめて春休みぐらいは満喫してもらいたいものだ。
<取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン