低精度の抗原検査、入国者の体調確認は自動発信のLINEだけ? 水際防疫のザルさが恐ろしい

空港イメージ

pocketalbum / PIXTA(ピクスタ)

 2019年12月に中国・武漢で新型コロナウイルスの感染が確認されて約1年が経ち、早くも「イギリス変異株」「南アフリカ変異株」「ブラジル変異株」と、新たな変異株が次々に出てくるようになりました。厄介なことに、これらの変異株は従来のウイルスに比べて感染力が高く、さらには重症化するリスクも高くなっているのではないかと懸念されています。  日本に変異株を蔓延させないためには、何よりも海外からウイルスが入ってこないようにする「水際対策」が重要になってくるわけですが、皆さんもうっすら気づいている通り、日本の水際対策は「ザル」としか言いようがありません。日本政府が「水際対策」のことを真剣に考えていないのです。

日本の水際対策は、今も「抗原定量検査」である

 海外から日本に入国する際、かつては「PCR検査」が行われていたのですが、検査の正確性よりも時間的な効率が重視され、「富士レビオ」の「ルミパルス」という商品が採用されるようになり、精度の高いPCR検査ではなく、精度という点では劣る「抗原定量検査」が行われるようになってしまいました。これだけ世界的にはPCR検査が一般的になっているのに、わざわざ空港検疫のような「絶対に見逃してはいけない」という場所で、精度の劣る検査が採用される意味が、さっぱりわかりません。  PCR検査は、RNAそのものを見るのに対し、抗原定量検査はウイルスのタンパク質を見るため、PCR検査よりも少ないウイルス量で検査をすることができるとされています。ただし、検査の精度としてはPCR検査の方が高く、見逃してしまうリスクが高いため、変異株を止めるための「水際対策」には向かないはずなのです。  当然、「これではまったく水際対策になっていないではないか」という声が出て、田村憲久厚生労働大臣は国会で「空港検疫をPCR検査にする」と発言していたはずなのですが、現場では今も「抗原定量検査」が採用され続けているため、このままでは日本にどんどん変異株が入ってきて、せっかく緊急事態宣言が出され、飲食店をはじめ、カラオケ屋さんやゲームセンターなどの娯楽施設、ホテルや旅館といった会社が苦しい思いをしながら頑張っているのに、こうした努力が台無しになってしまう危機的な状況になっているのです。今すぐ精度の高いPCR検査に切り替えないと、これからますます変異株が国内に蔓延し、日本経済に大きなダメージを与えかねない状況になっているのです。

言っていることとやっていることのギャップ

 先日、父親が入院したとの知らせを受け、ドイツから帰国した女性がいたのですが、その女性に日本の水際対策がどうだったかを尋ねたところ、衝撃の事実が判明しました。  当初、日本政府の説明では、入国した人は14日間隔離され、3度のPCR検査を受け、陰性が認められて初めて、日本国内を自由に行動できるという話でしたが、実際はどうだったのかと言うと、海外を出国する際にPCR検査を受けていれば、日本では抗原検査のみで判断され、一応、14日間の自主隔離をお願いするものの、本当に自主隔離しているかどうかを確かめることはないというのです。つまり、真面目に隔離される人もいるかもしれませんが、多くの人が入国と同時に自由に行動していると考えられます。  そもそも「抗原定量検査しかしない」というのには、大きな問題があります。抗原検査だと、精度が低いために、感染している人を見逃してしまうことはもちろん、飛行機の中で感染していた場合に、検査をされずに野に放たれてしまうことになるのです。この問題について、さっそく空港検疫の担当者に話を聞いてみると、「14日間の自主隔離があるので大丈夫だ」という答えでした。仮に飛行機の中で感染しても、14日間の自主隔離があるので大丈夫だというのです。  しかし、そうだとすると、別の問題が生じます。14日間の自主隔離がほとんど徹底されていないのではないかという疑惑があるのです。そこで、空港検疫の担当者に、14日間の自粛隔離を徹底するために、どのような対策をしているのかを聞いてみました。すると、担当者は「入国した人には毎日連絡をして、体調などをチェックしている」と言ったのです。
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入国者体調ヒアリングのずさんな実態
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