首相官邸HPより(CC BY 4.0)
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の辞任にあたり、武藤敏郎事務総長は会見で、森会長の発言は不適切であるとしたうえで、大会準備やスポーツ界への貢献があったことについて触れた。
国際オリンピック委員会(IOC)の
トーマス・バッハ会長も、辞任の決断を尊重したうえで、「
数年間にわたり多大な貢献をしてきたことに感謝したい」とコメントしている。
この問題は、「
目的」と「
貢献」に分解して考えるとわかりやすい。
東京開催の実現、
準備における「貢献」はあったが、オリンピック憲章で明確に示される
男女平等という「目的」に明らかに反しているという構図だ。
さらに、これを
数字で捉えるとイメージがわきやすい。大事なことは厳密で正確な数値を算出することではなく、だいたいでよいので
大括りでボリュームの大小を捉えることだ。
森会長の女性差別発言に関しては、IOCは森会長の謝罪会見直後は、
謝罪によってこの問題は解決したというスタンスをとっていた。
しかし、IOCにとって最大のスポンサーである米国放送会社
NBCが、
森会長の辞任を要求する記事を掲載したことから
態度を一変し、発言を問題視し始めた。
IOC収益の8割を占めているという
五輪開催による放映権料の大半をNBCが担っている。NBCとの契約は、2014年冬季大会から2032年夏季大会まで
1兆3000億円にのぼるという。
森会長の女性差別発言は、
それ自体がオリンピック憲章に示された目的に逆行する深刻な問題だ。ただ、それだけではなく、IOCを支える
スポンサーの意向に反し、ひいては東京大会のみならず
20年近くにわたるIOC運営に影響を及ぼす、
1兆円単位の規模でリスクをもたらす問題だと言える。
いっぽう、森会長の貢献としては、2015年時点で東京都が負担する
施設設備費4584億円を2567億円へ削減したという貢献が挙げられている。また、IOC委員などの宿泊ホテルのランクを下げたり、宿泊機関の短縮、パーティの縮小などを実現したことにも触れられている。
これらは、たしかに貢献していることなのだが、
数値のボリュームで捉えると2000億円規模に過ぎない。貢献はあったとしても、
目的を損なうリスクのほうが、圧倒的に大きいと言わざるを得ないだろう。