1兆円規模の損害や20年単位の影響も。「森喜朗元会長」こそが東京五輪最大のリスク

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首相官邸HPより(CC BY 4.0)

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の辞任にあたり、武藤敏郎事務総長は会見で、森会長の発言は不適切であるとしたうえで、大会準備やスポーツ界への貢献があったことについて触れた。

森元会長の「目的」と「貢献」の構図

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長も、辞任の決断を尊重したうえで、「数年間にわたり多大な貢献をしてきたことに感謝したい」とコメントしている。  この問題は、「目的」と「貢献」に分解して考えるとわかりやすい。  東京開催の実現、準備における「貢献」はあったが、オリンピック憲章で明確に示される男女平等という「目的」に明らかに反しているという構図だ。  さらに、これを数字で捉えるとイメージがわきやすい。大事なことは厳密で正確な数値を算出することではなく、だいたいでよいので大括りでボリュームの大小を捉えることだ。

20年近い影響や1兆円規模の損失リスクも

 森会長の女性差別発言に関しては、IOCは森会長の謝罪会見直後は、謝罪によってこの問題は解決したというスタンスをとっていた。  しかし、IOCにとって最大のスポンサーである米国放送会社NBCが、森会長の辞任を要求する記事を掲載したことから態度を一変し、発言を問題視し始めた。  IOC収益の8割を占めているという五輪開催による放映権料の大半をNBCが担っている。NBCとの契約は、2014年冬季大会から2032年夏季大会まで1兆3000億円にのぼるという。  森会長の女性差別発言は、それ自体がオリンピック憲章に示された目的に逆行する深刻な問題だ。ただ、それだけではなく、IOCを支えるスポンサーの意向に反し、ひいては東京大会のみならず20年近くにわたるIOC運営に影響を及ぼす1兆円単位の規模でリスクをもたらす問題だと言える。  いっぽう、森会長の貢献としては、2015年時点で東京都が負担する施設設備費4584億円を2567億円へ削減したという貢献が挙げられている。また、IOC委員などの宿泊ホテルのランクを下げたり、宿泊機関の短縮、パーティの縮小などを実現したことにも触れられている。  これらは、たしかに貢献していることなのだが、数値のボリュームで捉えると2000億円規模に過ぎない。貢献はあったとしても、目的を損なうリスクのほうが、圧倒的に大きいと言わざるを得ないだろう。
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日常のプラン立てにも有効な「目的」と「貢献」
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