外環道、リニアのルート上に暮らす住民が知らない「大深度」工事でも陥没事故の例

外環道とリニアのルート上に暮らす住民たちに知ってほしい

2018年5月にJR東海が住民説明会で使用した資料「中央新幹線品川・名古屋間における大深度地下使用の認可申請に関する説明会」より

2018年5月にJR東海が住民説明会で使用した資料「中央新幹線品川・名古屋間における大深度地下使用の認可申請に関する説明会」より。首都圏と中部圏の大深度区間は約50Kmもあり、直上にはおそらく数万軒の住宅がある。未だに多くの住民が直下にリニアが通ることを知らない

 JR東海は2027年に東京(品川駅)と名古屋駅を40分でつなぐリニア中央新幹線の工事を各地で進めている。2021年4月以降には、品川駅近くから直径14mのシールドマシンが大深度で掘削を始めることになる。品川~名古屋間の286Kmのうち、大深度区間は約50Km。そのほとんどの区間は住宅密集地であり、上記の事例のような山中ではない。陥没は間違っても起きてはいけない。  2018年5月にJR東海は東京や名古屋で大深度工事についての住民説明会を実施しているが、それに参加した筆者はJR東海の説明を覚えている――「大深度は硬い岩盤だから工事に問題はない」というものだ。
大深度だからといって「固くよく締まった地盤」と言えるのだろうか?

JR東海が住民説明会で使用した資料「中央新幹線品川・名古屋間における大深度地下使用の認可申請に関する説明会」より。大深度だからといって「固くよく締まった地盤」と言えるのだろうか?

 だが本稿で見た3つの事例では、大深度であっても固い岩盤ばかりではないことがわかる。そして大深度工事の指針として、国土交通省の「大深度地下使用技術指針・同解説」には工事前に100~200mおきのボーリング調査が目安とされている。しかし、JR東海は大田区と世田谷区においてはルート直上では約400mに1本のボーリング調査しかしていない。これでルート上の地質を把握できるのだろうか。  筆者が調べただけでも首都圏のリニア大深度ルートの直上には、保育園から高校までの教育施設が12もある。だが問題は、未だにルート直上に住む住民のほとんどが自宅の真下をリニアが通ることすら知らないことだ。
外環ルート

外環の東京での未完成ルートは、世田谷区(東名高速道路)・練馬区(関越道大泉ジャンクション)間の16Km(国土交通省・東京外かく環状国道事務所のウェブサイトより)

 外環に話を戻せば、外環は4m離れただけで2本のトンネルが並行して走るのだが、2本目のトンネル掘削はこれからの話だ。陥没事故により外環工事は中断したままだ。調布市の住民は今、果たして工事を再開するのか、2本目のトンネルがやってくるのかで、眠れない思いを抱いている。  地下190mであってもその崩落が地上を陥没させた事実は、大深度であっても油断はできない。できるだけ多くの人、特に外環ルートとリニアルートの直上に住む人たちにこの事実を知ってほしい。 <文・写真/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
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