ベトナム・ハノイで邦人男性死亡、死後にコロナと発覚し広がる波紋

旧正月前の「準ロックダウン」通達

帰省者が多く都市部は閑散

帰省者が多いので、バイクの数は少ない。(画像提供:ハノイ在住日本人)

 ベトナムは社会主義国なので、すべてがトップダウンの一発で決まり、逆らうことは許されない。そういった管理体制なので、感染者が出てもすぐにその建物を封鎖したり、地域をロックダウンできる。  今回の事件発覚以前の2月8日、首相府通知第26号が出された。これにより対策を実質的に実行するハノイ市やダナン市、ホーチミン市などは各々で対応を発表。感染者が多い地域から来る人には国内移動であっても強制隔離など、対応はそれぞれで違う。  この通達は、ベトナム人が最も大切にする連休「テト」の直前に出された。いわゆる旧正月で、2021年は2月12日が元旦だった。休暇は昨年末に政府が2月10日から16日の1週間と決定。ベトナムの労働法では5日間だけでもいいのだが、帰省ラッシュの密を防ぐ狙いがあったと見られる。  国内感染者が少なく、テトの連休も長いということで、在住外国人はみな、ベトナム国内旅行を楽しもうと、連休日程の閣議決定後に航空機やホテルを予約した人が続出。ところが、直前に首相府通達でロックダウンに近い状態になる地域や、住まいの住所によっては強制隔離があるということで、日本人の多くはテト休暇の旅行を断念した。  在住日本人曰く「幸い、こういう事態なので、ホテルはキャンセルチャージなし。ベトナム航空の場合、航空券は3か月後に全額払い戻しか、やや料金を上乗せした1年間有効クーポン券を受け取るかの2択でした」という。  ともあれ、この 「テト」が、今回の死亡発覚以前から始まったことで、後述する問題も浮上するようになる。

挨拶回りで多くの人に会っていたと思われる死亡男性

 ベトナム政府は感染者対策のために濃厚感染者らを等級分けしている。感染者と直接接した人をF1、F1と接触した人をF2、F2と接した人をF3などにしている。これによって国民自身も自分が置かれる立場を理解しやすく、感染対策への協力を要請しやすい。   また、海外からの入国者による感染拡大防止のためにも、かねてより強制隔離後に取るべき行動などのガイダンスを発表している。その中では『14日間の隔離を終えた者は、その後14日間、自宅又は居住地で、健康状態について自身による経過観察を継続する。周囲の人々との接触、混雑した場所への訪問を控え、5K(当館注:マスク着用、消毒、ソーシャルディスタンスの確保、密集しない、医療申告の実施。)を実施する。』(在ベトナム日本大使館のメールより引用)とある。  死亡後にコロナ感染が発覚した日本人男性は1月31日かその前日に強制隔離が終わり、2月1日にハノイに来ている。そして、14日(あるいは13日)に亡くなったと見られ、ちょうど、経過観察が明ける時期に来ていた。しかし、不運にも亡くなってしまった。  死亡男性がガイダンス通りにあまり人と接触していなければいいのだが、在住者同士の噂では、新任あいさつのためにかなりの人と会っていたとも言われる。いずれにしても、飲食店には複数行っており、そこで直接接客した人は、先の等級で分けるとF1になる。  死亡男性が勤めていた企業と同じビルに入居する日本人会社員は、「直接会っていないけれど、同じ飲食店で食べています。その飲食店名は大使館のメール内のリストにもありました。場合によってはF2になっているかもしれません」という。
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旧正月の帰省で国内に拡大した可能性も
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