メキシコ巨大カルテルシナロアが、大ボスがアメリカで収監され不在でも分裂しないワケ

Mayo_Zambada

シナロアの大ボス「エル・チャボ」不在を仕切る、エル・マーヨ(PublicDomain)

メキシコの2大カルテル

 昨年のメキシコで殺害された人の数は3万4515人、一昨年は3万4648人。その8割は麻薬組織カルテルとカルテルの下請け的な犯罪グループの犯行によるものだとメキシコ電子紙『SinEmbargo』(1月25日付)が指摘した。それは10万人当たり28人が殺害されたことになるという。  メキシコのカルテルの影響力は政界、司法界、軍隊、警察にまで及んでいる。同電子紙(1月26日付)によれば、メキシコ財務省金融インテリジェンス部の部長サンティアゴ・ニエト・カスティーリョは昨年9月にメキシコにはインパクトが大きい犯罪組織が19あると指摘し、その中で2つの組織が飛びぬけていることを挙げたとしている。  さらに、この二つの組織は2016-2018年の間で1兆ペソ(5兆2000億円)の利益を稼いでいた、と述べている。この二つの組織というのはカルテル・シナロア(Sinaloa)カルテル・ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)のことである。

傘下組織などを含めれば200近い犯罪組織が

 ただ、米国麻薬取締局(DEA)が主要犯罪組織として次の9つの主要カルテルをリストアップしている。①シナロア、②ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン、③ロス・セタス、④アレリャノ・フェリックス、⑤フアレス、⑥ベルトゥラン・レイバ、⑦デル・ゴルフォ、⑧ラ・ファミリア・ミチョアカン、⑨ロス・カバリェロス・テンプラリオスの9カルテルである。  また、メキシコには198のカルテル組織が存在しているという説や、いや231だと諸説あるのが実際だ。  しかし、カルテルなど犯罪組織についての専門家ホルヘ・フェルナンデス・メネンデスによれば、厳密にカルテルと呼べるのはメキシコには2つの組織しかないとしている。それが前出のシナロアとハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンである。メネンデスによれば、カルテルというのは麻薬の生産から始まって、その密売から売上た資金の洗浄、武器の購入並びに密輸などを一括してできる組織だとしている。それができるのがこの2つの組織だけであり、他のカルテルと呼ばれている組織の多くがこの2大カルテルの系列に入っているか、あるいは下請け的な存在として犯罪を行っているということで厳密にはカルテルとは呼べないと指摘している。  カルテルと犯罪組織グループの分類の仕方に専門家の間で見解の違いがあるにせよ、メキシコには大小231もの犯罪組織が存在する可能性があるというのは実に脅威である。それだけの犯罪組織があるゆえに年間で3万5000人余りが殺害されるということが繰り替えされているのである。
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シナロアのボス不在を仕切る男の存在
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