日本は、検査を抑制し、その代わりに濃厚接触者を追跡することで感染を抑え込む戦略を採用した。その戦略の是非はここではおく。しかしその戦略を採用するのであれば、濃厚接触者の把握と管理は必要不可欠だったはずだ。事実、それを大義名分として、数十億円の予算がシステム開発に投入され、「HER-SYS」も「COCOA」も日本独自の感染抑制戦略を支える「決戦兵器」として開発された。しかしこれまで見てきた通り、
「決戦兵器」であるはずの「HER-SYS」も「COCOA」も、利用された形跡や意図通りに稼働した形跡が一切ない。
これは「国費の無駄遣い」にとどまる問題ではないだろう。政府の感染症拡大防止戦略を頓挫させかねない問題であると同時に、感染者や濃厚接触者の管理が行われず野放しにされているという意味において、感染拡大、ひいては、
人命にも関わる問題だ。
しかし、厚労省は、本件に関し未だ明確な検証や説明を行っていない。それにも関わらず厚労省は、来年度予算にも巨額のシステム開発費を積み上げている。巨額の予算を注ぎ込んだシステムの不具合が次々と発見される中、その検証を行わず、更なる新しいシステムの開発を要求する厚労省の姿勢には首を傾げざるを得ない。
なお、 念のため、これらの点を厚労省に問い合わせたが、期日までに回答はなかった。
もはや、厚労省の姿勢は「お粗末」の一言で済まされない。徹底的な検証が必要だ。
<取材・文/HBO取材班>