コロナ禍でのバーチャル同人誌即売会「NEOKET」に参加してみた

コロナ禍で、オンライン同人誌即売会が増える

 2020年の初頭以降、新型コロナウイルスの流行により、対面でのイベントが著しく制限された。日本最大の同人誌即場会であるコミックマーケットも中止になり、丸一年開催されない年になった。その他の同人誌即売会も、リアルでのイベントを諦めるところが相次いだ。  そうした中、一部のイベントでは、オンライン開催に舵を切るところが出てきた。私が毎回参加していた技術書オンリーイベントの技術書典では、オンライン販売のイベントを2週間程度の期間でおこなった。  また、コミックマーケットでは、エアコミケということで、ネット上で同人誌の販売を盛り上げる試みがおこなわれた。同人誌を販売しているショップも、リアルのイベントに変わるものを模索した。同人誌販売大手のとらのあなでは、オンラインとら祭り2020夏を開催した。  様々なイベントやショップで、オンライン上での同人誌販売の企画が模索された。  私自身は、前年の2019年に、例年より多くのイベントに、サークル参加(出展)していた。夏冬のコミックマーケット、2回の技術書典、技術書同人誌博覧会、2回の文学フリマ東京、デジゲー博。友人のサークルの売り子として参加もしていたので、ひっきりなしにイベントに出ていた記憶がある。  それが、2020年には凪のようになり、リアルのイベント参加がゼロになってしまった。その代わりに、オンラインのイベントに参加した。参加先として選んだのは、過去に参加していたイベントのオンライン版だった。新たなイベントに参加するのはハードルが高いと感じたからだ。  私自身は限られたイベントにしか参加しなかったが、世の中では多くのオンラインイベントがおこなわれた。  開催されたイベントの中には、3D空間での体験をメインにしたものもある。たとえば、2018年から開催されているバーチャルマーケットがある。  第1回はサークル数80、出展企業2社から始まったこのイベントは、2020年12月19日から23日間おこなわれた第5回では、1100を越えるサークル、73の企業やアーティストが出展して、来場者数は100万人を超えた(バーチャルマーケットPR TIMES)。  Vtuber の隆盛や、リアルに会えない時代の到来により、世の中はVRへの風が吹いていると感じる。  そうした中、去年の年末、Twitter を見ているときに、たまたまタイムラインに流れてきた NEOKET というイベントにサークル参加を申し込んだ。  オールジャンルオンライン同人誌即売会ということで、私のように文章とプログラムだけの同人誌を作っている人間でも、参加してよさそうだと思ったからだ。また、ちょうどエアコミケに申し込むタイミングだったため、登録作業を流れでまとめておこなったという背景もある。  申し込んだ時点では、本当に何となく登録作業をおこない、どんなイベントか把握していなかった。そのあと、だんだん、どういったイベントなのか気づき始めた。  12月末から1月にかけて仕事が忙しく、登録したことを忘れていた。そこに、「参加者は Discord でやり取りする」という内容のメールが届いた。そして、NEOKET 出展者向けのチャンネルに登録して、慌てて情報を確認し始めた。

NEOKETというイベント

 NEOKET というイベントの主催は、イラスト コミュニケーションサービス pixiv や、創作物の総合マーケット BOOTH を主催するピクシブ株式会社だ。また、NEOKET の連携サービスは、BOOTH や、同社の3Dキャラクター作成プロジェクト VRoid となっていた。  ちょうどその時期、私は VRoid Studio を使って3Dキャラクターを出力して、イラスト マンガ制作ソフトの CLIP STUDIO PAINT で3Dマンガを描く実験をおこなっていた。そのため「ああ、あの VRoid か」と、すんなりと飲みこめた。  また、NEOKET の協力は monoAI technology株式会社となっており、イベントへの参加は、同社の XR CLOUD というバーチャル空間プラットフォームを使うことが分かった。  何分、ふだんVR空間でのイベントなどに参加しないので、どうなるのだろうと不安だった。  Discord に投稿された説明を見ると、イベントの参加は XR CLOUD で0円のチケットを購入して、専用の NEOKET アプリでおこなうらしい。また、サークル参加者(出展者)には、自動でチケットが付与されることも分かった。  Discord を見ていると、この NEOKET アプリが頻繁にアップデートされていた。どうやら、細かな改善をずっとおこなっているようだ。これは「大丈夫かな」と思うとともに、「熱意をもって取り組んでいるな」という熱量を感じた。サークル参加者からの質問にも、どんどん回答が投稿され、主催者側は、本気で取り組んでいるようだと感想を持った。  そして、イベント前日の1月29日に、NEOKET アプリのバージョン1.0.6がアップロードされて、1月30日のイベント本番が始まった。
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VR空間のオンライン同人誌即売会 NEOKET
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