2021年1月11日、緊急事態宣言下の東京 (Photo by Yusuke Harada/NurPhoto via Getty Images)
年末年始から一連の行事も終わり、世間も漸く落ち着いてきました。暦の上では、今後大きな社会的イベントが一月半程は少ないと思われます。その為、季節性第3波エピデミックSurge(うねり、波)の観測と評価に好適な時期が到来したと言えます。このSurgeを収束させなければ、規制緩和と共にエピデミックがすぐに増進することを昨年5月に合衆国が示しています。
さて、菅内閣による緊急事態宣言(菅緊急事態宣言)が発表されたのが1/8で、実際に働き始めたのが1/12以降ですが、2021/01/26以降にその効果が現れます。とくに対象都市の拡大、外食産業の夜間営業の制限(時短)の効果は、1/28以降に現れると考えられます。また昨年12/22から3波から4波にかけて統計に現れた一過性のSpike(棘)も完全に通過しており、実効再生産数や一・二週間週次変化率と言った一部の重要指標以外への影響はもうありません。
そこで今回から数回にかけて第三波エピデミックの中間評価を本邦(日本)、韓国、台湾を比較して行います。日韓台三カ国3国それぞれに変化が見られますので今回は、全体の概況を述べます。図表は、
前回記事とできるだけ同じ配置にしていますので、比較しやすくなっています。またそれぞれのグラフは、直接Our World in DATA(OWID)の同じグラフにリンクを張っていますので、最新版を閲覧するなどできます。
本邦と韓国は、100万人あたりの日毎新規感染者数がクリスマス前までにほぼ同率になりましたが、韓国ではクリスマス前から減少が始まり、年明けにはかなり改善しています。
本邦は、日毎新規感染者数が1月半ばまで急速に増加し、たいへんに先が危ぶまれる状況になりました。結果、本邦では1/8に菅内閣により緊急事態宣言が発表され、一部の都市を対象としながら順次拡大して、少なくとも2/7まで継続する予定です。本邦では、実質的に緊急事態宣言が機能し始めた1/12から14日後の1/26頃から緊急事態宣言の効果が現れますので、日毎新規感染者数が減少に転ずるとすれば今週(1月5週)初めからとなります。しかし実際には、1月第3週から減少を始めており、また実効再生産数*も1月第3週から新規感染者数の減少を示すR0<1となっています。但し、後述しますがこの実効再生産数は、緊急事態宣言の解除、延長の判断材料にはできません。
〈*実効再生産数R0とは、ウィルスの増殖の程度を表す数値で、一定期間にウィルスが増えればR0>1となり変化無しでR0=1、減少でR0<1となる。このためウィルス対策の政策評価に使われることが多く、昨年5月頃までは海外報道でも頻繁に目にしたが、夏以降使われることは本邦を除き殆ど無くなっている。これは、エピデミックの波はSurgeとSpikeの二種類の波の合成波であり、実効再生産数R0は、しばしば突発性且つ一過性のSpikeによって混乱し、判断材料にならないためであると考えられる〉
本邦は日毎新規感染数で、東部アジア・大洋州でマレーシア、インドネシアに次ぐワースト3であり、アジア*全体平均値の二倍を超える状況が続いており、そのうえ既に英国変異株の市中感染**も進んでいますので、先の見通しは明るいとは言えません。
〈*アジアとは一般に、ウラル山脈、ボスポラス海峡、紅海より東を指す。従って、人口の半数は非謎々効果国である〉
〈**
<新型コロナ>埼玉で変異ウイルスクラスターが発生 職場から広がり全員入院中2021/01/30東京新聞
日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm線形 7日移動平均)2020/01/23-2021/01/28 出典/OWID
韓国では、新規感染者数の発生を減少させることに成功し、8ppm程度の発生にまで押さえ込みましたが、そこで下げ止まってしまいました。Baselineを1ppm未満に押さえ込まなければ不十分と筆者は考えますので、まだまだK防疫の緩和は時期尚早でしょう。ここで、筆者が最も恐れていたことが起きました。
韓国では、1月第五週に入り、恐れていたSpikeが発生しました。このSpikeは、大田で発見され、次いで光州で発見されました。今回のSpikeは、プロテスタント系であるIM宣教会の未認可教育施設で発生した集団感染によるものです*。韓国では、宗教団体における大規模な集団感染が筆者の知るだけでも通算三回発生し、全国規模に拡大しています。現在韓国を苦しめている第三波エピデミックSurgeも、元をたどればサラン第一教会が8/15光復節にゲリラ的に行ったソウル市内での5万人集会によって生じた集団感染によるBaselineの跳ね上がりです。信仰の自由と防疫の対立は、韓国だけではなく、合衆国やイスラエルでも厳しいものがあり、とくにK防疫の成功によってエピデミックの制圧が上手く行っている韓国ではたいへんに悩ましいものとなっています。
〈参照:
韓国で宗教団体関連施設発の集団感染、少なくとも341人…第3波再拡散の岐路 2021/01/28 hankyoreh japan〉
韓国では、1/29に社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)調整案が発表される予定ですが、1月中旬以降に目立つ日毎新規感染者数の下げ止まりと、大田と光州における集団感染によって要求される社会的距離の緩和は難しいのではないでしょうか。筆者は、あと1ヶ月は緩和すべきでないと考えます*。
〈*IM宣教会に発するアウトブレイクの影響は甚大で、1/29に中央防疫対策本部会合で予定された社会的距離措置調整案の検討は中止された模様である。参照記事:
韓国、新型コロナ新規感染者469名…韓国首相「大流行の予兆との見方も」2021/01/30 hankyoreh japan 〉
台湾では、今年に入り国内での新規感染者が僅かではありますが発生する様になっています。その為、台湾衛生福利部(台湾厚生省)は、感染者の行動情報を公開し、市民に接触追跡や自己検疫(外出自粛)への協力を呼びかけています。
現状が続けば台湾は、冬の季節性エピデミック無しで冬を脱し、春を迎えることができると思われますが、2月に春節*を迎えますので台湾CDCは自主検疫を呼びかけています。
〈*旧正月で東部アジアでは本邦を除く多くの国が旧正月を正月としている〉
日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/01/28 出典/OWID
〈参照:新たに国内で発見された新規感染者(Case 882)の国内行動履歴を公表する中華民国衛生福利部(台湾厚生省)
中華民国衛生福利部Tweet〉
https://twitter.com/MOHW_Taiwan/status/1353231905462751233
〈参照:台湾における自主検疫日数の告知/先月の検疫破りによる台湾市中へのCOVID-19以降、台湾では国内での新規感染者発見がパラパラと生じており台湾厚生省は、自己検疫の徹底を呼びかけている。台湾では、市中感染者がほぼゼロであるために自主検疫と自主健康管理の徹底で足りており、大量PCR検査を要していない。出典は
台湾CDC Tweet
〈参照:春節を前に自主検疫の徹底を呼びかける
台湾CDC Tweet〉