1月15日、第1回口頭弁論に向けて入廷する静岡県リニア工事差止訴訟原告団。
1月15日。静岡地方裁判所で107人の原告が「リニア新幹線工事差し止め」を求めた訴訟の第1回口頭弁論が開催された。
JR東海が2027年に東京(品川駅)と名古屋駅との開通を目指すリニア中央新幹線(以下、リニア)。この計画に対しての裁判としては、これが3つ目となる。
【裁判1】
2016年5月。738人が原告となり、国交省を相手取ってリニア計画への事業認可の取り消しを求めた行政訴訟。
【裁判2】
2019年5月。8人が原告となり、JR東海を相手取っての「リニア工事差し止め」を求めた民事訴訟。(山梨県南アルプス市)
【裁判3】
2020年10月。107人が原告となり、JR東海を相手取っての「リニア工事差し止め」を求めた民事訴訟。(静岡県)
原告団が作成した「リニア不要」を訴えるパンフレット。
今回の裁判の背景をざっと簡単に説明すれば以下のようになる。
2013年10月。JR東海はリニア計画環境アセスの結果として、静岡県最北部の南アルプスでのトンネル工事をすると「(無策の場合は)大井川の流量が毎秒2トン減る」と予測。これは大井川を水源とする中下流域の8市2町62万人分の水利権量と一致する膨大な量であり、当該自治体にとっては驚きしかなかった。
川勝平太・静岡県知事はJR東海に対し、「この件での協議に参加すること」という要請を出す。これにJR東海が応じたことで2014年から、県・学識者・利水団体・JR東海が話し合う「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」(以下、連絡会議)が開催された。
県の主な要求は「失われる水の全量を大井川水系に戻してほしい」というものだ。だが7年が経とうとする今も、JR東海からは県が納得するだけの具体策が打ち出されていない。これこそが、リニアが通過する1都6県の中で、静岡県だけが唯一リニアの本線工事を認めない理由だ。
だが、この取り組みは「県vs.JR東海」という構図で、そこに県民はいなかった。筆者が2014年以来違和感を覚えていたのは、これだけの水が失われる可能性があるのに、県内での市民運動がほとんどなかったことである。