「大井川の水源を守りたい」。リニア工事差し止めを求める静岡県民の訴訟始まる

注目の集まる静岡での裁判には、被告側弁護人も出席せざるを得ず

山梨県上野原市の山中。この近くで行われたリニア山梨実験線のトンネル工事が地下水脈を断ち切り、釣りのメッカだった「棚の入沢」は1滴の水も流れなくなった。

山梨県上野原市の山中。この近くで行われたリニア山梨実験線のトンネル工事が地下水脈を断ち切り、釣りのメッカだった「棚の入沢」は1滴の水も流れなくなった。JR東海も工事との因果関係を認めている。

 最後に、当たり前の話と思われそうだが、筆者が今回感心したのはJR東海側の弁護士が出廷していたことだ。というのは、山梨県での工事差し止め裁判において、2019年7月30日の第1回口頭弁論でJR東海側の弁護士が欠席した事実があるからだ。  民事裁判においては、「第1回期日に限り、答弁書を裁判所に提出すれば被告は欠席してもいい」ことになっている。しかしこのとき、原告側代理人の梶山正三弁護は「けしからん!」と憤った。  7月30日という期日が決まったのは6月6日。被告側に代理人は4人もいるのだから1人くらいは出席するはずだと予想していたのに、裁判前日の7月29日、被告側弁護士から梶山弁護士に「参加しない」との電話が入った。 「いや、誰か一人くらい出てください!」 「そう決めたもので……」  梶山弁護士は「原告の非難を直接聞きたくなかったのか」と推測したが、JR東海側の判断は今でも理解しがたい。そしてその日、「自分たちの主張をやっとJR東海にぶつけられる」と気合を入れていた原告住民のうち3人は、無人の被告席に向かって意見陳述をしたのである。  しかし静岡でこれだけの注目が集まる中では、さすがに同じことはできなかったのかもしれない。JR東海は各地の住民説明会で、住民からの質問に具体的に答えてこなかった過去がある。だが、裁判ではそれが許されない。ぜひ、原告・被告双方による具体的数値や具体的事実を基にした論争を期待したい。次回期日は4月23日14時半から。 <文・写真/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
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